二章 権力の目覚め
「う~ん、気分爽快!」
相変わらず、その輝く美貌を隠すためにボサボサの三つ編みに瓶底メガネ、ダブダブの上着にパンツという格好だが、瓶底メガネの奥の目はいままでになく輝いている。
「ご機嫌ですね、お嬢さま」
と、秘書役も兼ねるメイドの少女、
「それはもう! お邪魔虫たちがいなくなって、お仕事がポンポン進むようになって、楽しいんだもの。ああ~、誰にも邪魔されずに、お仕事に専念できることがこんなに幸せだなんて忘れてたわあ~」
「お邪魔虫、ですか」
誰のことですか、と、尋ねる
「
「
「ふっふっふっ」
「あたしはね、
「はあ……」
「つまり! いまのあたしは権力者! やる気になればなんだってできる! いまさらながらにそのことに気がついたのよ!」
と、
爽快そのものの笑い声が広大な屋敷に響く、ひびく。
「本当にいまさらですね。最初から気づいておくべきことですのに。それで? そのことに気がついたからどうしたと言うのです?」
「だ~か~ら~」
と、
「ご領主権限で
「追放、ですか?」
「そ。あの三人、事あるごとにあたしに迫ってくるんだもの。さすがに堪忍袋の緒が切れたわ」
「あのお三方を、ご自分の嫁としてお持ち帰りになられたのは、お嬢さまご自身ですよ」
「それはともかく! 三人に辺境任務を命じてやったのよ。ノルマを達成するまで帰ってくるな。守れなければ離婚だ! って、申しわたしてね。あのノルマの量からして……」
ふふん、と、
「たっぷり、一週間は帰って来れないわ!」
「一週間……ですか?」
「そう! 一週間。ちょお~と、厳しすぎるかな~って気もするけどね。でも、あたしにさんざん迷惑かけたんだもの。それぐらいは当然の報いよねえ」
――追放するにしてもわずか一週間。なんともみみっちい。
と、心のなかで呟く
「あ、そう言えば……」
メイド少女の内心の呟きなど知らない
「
「
「ええ~、そうなのお?」
「はい」
「そっかあ、それは残念。でも、仕方ないか。魔法少女というお仕事のために呼ばれちゃったんだものね。お仕事は大事だものね」
「はい、そのとおりです。あの方がおられれば、たとえガ○ノ○ーアが出現しようとも地球は安泰です」
「へえ、
「はい。正直、幸運でした。もし、本気で戦うとなったら、本物の
「まあ、あの立派な体格だもんねえ。強くて当たり前かあ」
「まあ、最終的にはわたしが出れば万事解決ですので、本質的な問題はないのですが」
「そう言えば
言われて、
「一〇〇倍と言いますか……初期ベ○ータと本気フ○ーザぐらいの差はありますね」
「えええっ⁉
「はい。わたしのことは『師匠』と呼んでください」
「だったら、最初から
「いまさら、そんな面倒くせえことはごめんだ」
「なによ、それ⁉」
「まあ、冗談はともかく……」
コホン、と咳払いなどしながら
――絶対、本気だ!
と腹の底から確信した。
頬をふくらませ、唇をとがらせて不平不満を
「自分がヒーローになったら、ヒーローの活躍を見守ることができないではありませんか」
「ええっ~、そんなのありぃ?」
「もちろんです。コーチの方が能力的に優れているからと言って、選手のかわりに試合に出るのは駄目でしょう。選手を育てることがコーチのお仕事なのですから。それと同様、お嬢さまを立派なヒーロー令嬢とすること。それこそが、いまのわたしのお仕事なのです」
「……お仕事。うん。お仕事なら仕方ないよね」
「そういうことです。では、お嬢さまのお仕事ですが……」
「……お仕事」
瓶底メガネの奥の目がキラリと光る。
「隣国のブシード王国において、コンヤ・クゥ・ハッキの活動している痕跡が見られました。すぐに向かっていただきます」
「わかった!」
「お仕事だもんね。お仕事、がんばる。すぐに行くぞ。まってろ、お仕事!」
威勢の声のままに、勢いよく駆けていく。
どこに行くのか、いつ行くのか、そのことを尋ねもしないまま。
そんな
「……どう見ても、ご領主などではなくてお仕事の奴隷ですね」
「あのお~」
と、
「……ブシード王国って、どこにあるの?」
はああ~、と、重いおもいため息をつく
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