エピソード十三 自分のような奴隷身分とは生まれ付き異なる

『明日はいよいよ。収穫之月エルンテ・モーントのおフェストね♪』


『楽しみだね。姉さん♪』


御孫様による独白どくはくを聞いてから数日が経過をしましたけれど、結局地主様が治める土地に隣接をする御領地から逃げ出した奴隷身分の農奴は見付かりませんでしたから、不案内な土地で夜に川に入り下流に流されて溺れたのだろうと皆で考えて。一日の仕事を終えた後の食堂エス・ツィンマーでの関心と話題は、明日のおフェストに移っています。


『俺が愛する妻である母さんに愛の告白をしたのも、収穫之月エルンテ・モーントフェストでだったからな♪』


楽し気に話した父さんに対して、母さんも嬉しそうな笑みを見せると。


『お父さんの視線には前から気が付いていましたけれど、真っ直ぐに目を見詰めながら愛の告白をしてもらえて嬉しかったわ♪』


父さんと母さんは、十四歳の姉さんと十三歳の自分という姉弟の子供を二人儲けている、非常に仲睦まじい理想的な夫婦だと。息子から見ても思います。


『御孫様は今年のおフェストも御留守番かしら?』


食堂エス・ツィンマーの上座にて、食後の御茶を独りで静かに飲まれていられる御孫様に姉さんが視線を向けながら話すと、父さんがどうだろうなとという表情を浮かべて。


『地主様による御方針で、天から根元魔法の素質を授かりし地主様か御孫様のどちらかが、常に必ず土地に居るようにされているからな。地主様がフェストに行かれるなら、御孫様は御留守番だろうな』


収穫之月エルンテ・モーントのおフェストは、数日前に逃亡奴隷の捜索を手伝いました監視者アオフ・ゼーアーが働いている、皇帝陛下の直轄領でもある御領地で開催されます。


ヴォルフの群れやベーアが出没したら、魔法使マーギアーいであらせられる地主様と御孫様の根元魔法で駆除して頂く必要があるから、どちらかが必ず御留守番となるわね』


母さんの話しに自分も頷きまして。


『御孫様が根元魔法の原子核崩壊アトーム・ツェアファルで、害獣駆除でされるのは以前に見た事があります。本当に跡形も無く消し去るので、最初に見た時は驚きました』


突進して来るベーアに対して沈着冷静に魔法障壁マーギッシェ・バリエーレを張り弾き飛ばしてから、原子核崩壊アトーム・ツェアファルにより一瞬で跡形も無く消し去る御孫様を見た時に。やはりこの御方は自分のような奴隷身分とは生まれ付き異なる、天から根元魔法の素質を授かりし選良ディ・エリーテなのだと実感しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

故郷での夏の日々 @curisutofa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ