エピソード六 夕御飯の席での家族による会話

『祖父は今宵こよいは所用があるそうですので、夕餉ゆうげ余所よそられます』


御屋敷の食堂エス・ツィンマーに集まった農奴である自分達に対して、御孫様が御説明なされましたが。地主様の席である上座には最初から夕御飯は用意されていませでしたので、厨房で働く母さんや姉さん等の内働きの女性奴隷労働者スクラーヴェン・アルバイテリンには、地主様は出掛けて留守にされると予め伝えていられたようです。


『せっかくの料理が冷めてはいけませんから頂く事にしましょう。頂きます』


『『頂きます』』


御爺様であらせられる地主様が御不在の際には、当主代行を務められます御孫様の言葉に続きまして、自分達奴隷身分の農奴も全員が食事を頂く際の挨拶を行いました。


『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』


食堂エス・ツィンマーでの食事中は、他者の迷惑にならない範囲でしたら話しながら料理を食べて良い事になっていますので。家族や仲の良い友達同士で談笑しながら、楽しい一時を過ごせます。


『シモンは今日も御孫様と一緒に仕事をしたのよね?』


『うん。そうだよ姉さん』


自分よりも一歳年上の十四歳の姉さんは、母さんと一緒に御屋敷の厨房で働いている女性奴隷労働者スクラーヴェン・アルバイテリンですけれど。今夜は御爺様であらせられる地主様が留守にされているので、食堂エス・ツィンマーの上座にて独りで夕御飯を食べられている御孫様に視線を向けながら。


『御孫様は同い年のシモンを特に気に入られているようだけれど、今夜のように御一人で夕御飯をられる際には、話し相手をした方が良いのではないかしら?』


御孫様御自身は気にされていられないように見えますが、御爺様であらせられる地主様は出掛けられる事も多い御方ですので、上座にて独りで食事をられる事がそれなりにあります。


『もし話し相手が欲しければ、御孫様の方からシモンに言うだろう』


父さんの言葉に母さんも同意して頷きまして。


『私達は地主様と御孫様に非常に良くして頂いているけれど、奴隷身分の所有物である事は決して忘れては駄目よ』


『うん。分かってる。母さん』


『はい。母さんの言う通りです』


姉さんと自分の姉弟は母さんに対して分かっていると答えましたけれど、姉さんは完全には納得していないように弟として感じました。

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