エピソード五 農奴の父子

『カチャッ。ただいま』


『おう、お帰りシモン。暑い中での草毟くさむしりご苦労さん』


『ありがとう。父さん』


農奴の女性達に洗濯物を預けまして、御孫様と別れて帰宅しましたが。父さんが一人で農作業に使う道具の手入れをしていました。


『夕飯の前に、今日使ったなととかの手入れを先にしておけ』


御孫様の御爺様であらせられる地主様の下で、経験豊富な農奴として働いている父さんの言葉に素直に頷きまして。


『うん。そうするよ。父さん』


家族で暮らしている部屋の天井に吊されている、かりをともしている魔道具の角灯ランタンの下で、なた等の今日使用した道具を取り出し手入れを始めると。息子である自分と同じ黒髪シュヴァルツ褐色ブルネットの肌色をしている父さんが笑いながら。


『俺は本当に幸運だな。地主様には惚れた女と所帯を持つのを御許し頂けた上に、シモンのような親の言う事を素直に聞く働き者の息子に恵まれたんだからな♪』


地主様の土地で働く奴隷身分の農奴は、全員が地主様の所有物ですので。結婚して家庭を持つのも、所有者であらせられる地主様の御許しが必要です。


『他の土地では、奴隷身分同士による結婚の御許しは簡単ではないのかな?』


息子である自分の疑問に対して父さんは、慣れた動きで農作業に使う道具を手入れを止める事無く、少し考えてから。


『以前に他の土地で働いていて、地主様に売られて来た農奴仲間の話しではそうらしいな。中には奴隷身分の愛妾あいしょうを何人もかこっている人もいるらしいからな』


男性が一人で複数の女性奴隷労働者スクラーヴェン・アルバイテリン愛妾あいしょうとしてかこうのは、お金が掛かり大変だと思います。

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