第4回 開かれた先端
走っていったタナカナだが、数秒で戻ってきた…目を合わさないが距離は近い。
「んっ」
何がだ?全く分からない…イエティがどうしたとか言われても俺には何が何だが…
「どーよ?ケンケン?カナチョロ可愛くね?おちた?」
いきなり京極が落ちたかどうか聞いてくる…俺はなかなか落ちない男だ。
しかし何故、俺に絞め技の耐久性を聞いてくる?
陰キャの俺には世界の速度についていけない…
俺はもう一度、改造されたタナカナを見る…スカート短過ぎるだろ…シャツのサイズ小さすぎてタナカナの暴れパイが少し漏れている…目茶苦茶だ。
タナカナのパンツ…いや、ビキニか?水色の水着を下に着てるのか…俺は椅子に座りながら立っているタナカナのデルタゾーンを、全力でガン見してしまった。
「んっ…ん?見っ!?んっ!」
タナカナは短いスカートを押さえ俺の視界に手をやった。
京極がスマホをタナカナに渡し、指を差した。
そのスマホを見ながら俺に言った。
「ワタシノォ゙マンチョロゲ コユイシ?ワキゲド?イツショデェ…チョロゲ、ミンナシ?ん?」
俺は何となく予測し、もしかしたらもう一回デルタゾーンをガン見した。
スカートを押さえた拍子にズレたんだろうな、ビキニが。
そこには紛う事なき本格中華の様なちぢれ麺が「厶っ!?んんっ!んっ!」
またタナカナに手のひらで視界を消されたが、とにかく何だっけ?
そうだ…タナカナが別人のようになっている事だ。これはどういう事だ?
一つ言えるのは今までの眼鏡地味子のタナカナも良かったが、素材が良かったのだろう。
別人のような、しかしイケてる白ギャルになっていたのだ。
「スゥ゙キッテ?イエティ?カワイクネ?ツテイエティ?」
「おっ…おお、可愛い…です…」
「んっ♥」
何だが喜んで頂けた様だ。京極がドヤ顔で言った。
「良かったじゃん?カナチョロマジチョロ〜?」
日本語が不自由な京極はほっておくとして…気づけば周りの男子もザワついていた…
「田中、マジ可愛くね?」
「すげー変わりようじゃん!でも北斗の女なんだろ?北斗ヤベェからな、噂によると頭が…この急な変化も北斗のせいかもな…娼館に送るんじゃね?」
この現代において娼館と言う呼び方はどうか?
そしてお前等に頭の出来は言われたくない…が…
とにかく俺の存在が足を引っ張っているのは確かの様だ。
そう…生まれ変わり、皆に可愛いと言われ始めたタナカナと、陰キャドクズの俺とは自然に距離が開いていくのは必然だった。
それから日にちが経つと…
京極とつるんでいる?タナカナはカタコトみたいだが、昼休みは皆と笑いながら話している。
クラスでも中学時代はバスケで中途半端に活躍したイケメン、【堕ちたMVPのイミテーション】こと、四井久がタナカナに果敢に話しかけていた。
「クラスのアイドルにお近付きになりてぇんだけど?」
「ギンコウゴウトウ スルッティー イエティ?」
「ハハ、何それ、ウケる(笑)」
会話が成立していないが何やら楽しそうだ。
こうして俺はどんどん孤立して…
「ケン!聞いてんのか?いい加減ケンって俺の事呼んでくれよ?武蔵野だとエレジーみてぇだろ?ほら、バンバンバーンって」
俺が孤独を深めようとすると、武蔵野の馬鹿が俺に意味不明な音声を発する。
お前をケンと呼ぶと、俺もケンでごちゃごちゃするだろうが。
コイツの頭の中はどうなっているのか?
どんどんアイドル化していくタナカナを尻目に俺は陰キャらしく漢字の清書をする事にした。
【田中香菜】でも良いが、俺には忘れてはいけない事がある。
【愛】
タナカナを愛する気持ちを忘れてはいけない。
そう思いながら愛を清書する。
「どうした?ケン、気が狂ったか?」
お前に言われたくないわ…と思いながら無視して清書を続けた。
集中して書いていると、気付ばタナカナが隣に立っていた。
もう帰りか…清書始めたの昼休みだぞ?
誰か俺を止めろよと思ったが陰キャの俺を止める奴は居ないよな。
タナカナがスマホを見ながら言った。
「カエリィ?ハヤシニィオシタオスー?ッテイエティ?」
「そうだね」
「んっ…」
俺とタナカナはツーカーだからな。要は帰ろうって言ってくれているんだ。
帰り道で【愛】と言う字を清書しているのを見られた為に、言い訳がましく説明した。
「タナカナ…愛って十書いたらアイドルみてぇだな…百書いたら…」
「んっ?」
「そうだな…学園のアイドルだな」
「んっ」
言ってる意味が自分で分からなくなったが、とにかくそういう事だ。
隣を見るとイケてるタナカナがいる。
正直、学園のアイドルになっていくタナカナを止めた方が良いのかも知れない。
陰キャを目指している俺だが、そもそも陰キャになった所でタナカナを射止める事が出来るのか?
「タナカナは…アイドル…学園のアイドル…か…」
「………んっ、私は…私…アイドルじゃ…ないよ?…ただの…んっ」
タナカナがペラペラ喋った!?
よく見ると梅雨前の時化った季節もあるだろうが…タナカナは汗でビチョビチョになっていた。
汗で眉毛も片方無くなっていた…ただの…何だろう?
アイドル馬鹿の顔になったのかも知れないな。
何となく、名シーンが出るのはまだ先だと思うと気が重い…そんな気持ちになった。
スマホ見ながら…いつもの棒読みで何か言っている。
「メーチャクチャ二?シテヤールッテ?イエティ?」
「そうだな、タナカナの言う通りだ…あ!」
「いたっ!」
スマホを見ながら歩くから案の定、転んだ。
転んだ拍子に汗で濡れた青いハイレグビキニが食込み、見ちゃいけない貝類みたいなものや先端がある何かをみた気がした。
「ほら、スマホ見ながら歩くから…」「んっ!?」
ほら平静を保ちながらタナカナを肩を抱き起こしてやると、ブルブル震えながら寄り目でタコの真似をして来た。
それはイエティじゃない、クラーケンかな?
何か生臭えしな。
「ほら、しっかり歩け」パンっパンっ
「んっ!?♥んんっ!!♥」
俺はスカートをはたくつもりがスカートが短すぎてほぼケツを叩いた。
しかしまぁ、世話をやけるのもどれぐらいだろうか?
そう、イエティは伝説の生き物。人とは交わらない。アイドルだってそう、排泄しないんだもんな。
そして伝説の幕開けは…刻一刻と近付いていた。
こうやって2人で歩いて帰るのも…あと僅かかも知れない…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます