第3回 謎の学園のアイドル

 あの後、タナカナはふらつきなから家に帰った。

 

 物言わぬタナカナだが…片眉を押さえながら空を睨む顔に決意をしていた…アイドルへの決意を…してきたような気がする。


 そして…次の日。


 俺はタナカナを迎えに行くのが日課だ。

 タナカナがアイドルになった時に、もう迎えに来なくて良いと言われる所までやり続けるつもりだ。

 なんせ愛しているからな…心から。


 ピンポーン


 すると片眉が描かれているが、微妙に高さがあってないせいで、片眉を上げておどけている外国人俳優の様だ。

 何処かで見たがこの片眉上げという行為…何やら『安心して下さい』とか『大丈だよ』という意味らしい…

 つまりこの片眉上げを24時間体制で行う…既に学園のアイドルに片足を突っ込んでいるという訳だ。


「おはよう、タナカナ」


「なに?わざわざ今日も来てくれたの?ご苦労さ…ガ!?」


 タナカナが…朝一番から十文字以上喋った!?

 余りの驚きに俺の眉毛は両方上がり、驚いた所でタナカナの頭の位置が横から来た張り手で何センチかズレた。

 

「アンタっ!健ちゃんに何いってんの!?来てくれたの?じゃないよこの馬鹿娘!」


「…………………………んっ」


「健ちゃんに捨てられたらアンタ何か路傍のい「んんっ!?んっ…!」


 不満気なタナカナが母親を奥に追いやり何か言っている。


「……母さ………余計な……」

「アンタが健ちゃんに酷い態度取るからでしょ!?」「やめてよ…大声で…おねが…」


 何やら揉めている…しかし今もまた、学園のアイドルの片鱗が見えた気がした…俺如きが迎えに来る事を不快に思ったのだ。


 来てるな…間違いなく、タナカナが時代が…


 準備が出来たと家から出てきたタナカナ、俺はいつものように喋りかける。

 ただ、片眉か上がっているアイドル然したタナカナに緊張しているのも事実。

 ついつい近所でクワガタ見たとか、ウィリーウィリアムスが戦ったのは満腹の子熊の可能性があるとか、どうでも良い話を延々としてしまった。


 それでもタナカナはいつもの「んっ」しか言わない訳だが…


 片眉が上がっているタナカナと校門を通ると俺達を見た生徒がザワついた。


 いよいよか、タナカナのアイドル伝説の始ま「おはよう!ケン」


「うお!?」「んんっ!?」


「今日も良い天気だな!ケンが俺を剣道やってなかったと疑っているじゃ無いかと思って、剣道の面付けてきたのさ」


 この声は武蔵野か!?頭がおかしいんじゃないか?何で制服に剣道の面を付けて登校する?

 しかも禁煙パイポでイキリたいのか…剣道の面の隙間から延長された禁煙パイポが飛び出してる。


「あれぇ!?ケンケンじゃーん!てことはカナチョロも一緒じゃーん♪て、カナチョロ何それぇ〜?チョーウケるぅ(笑)」


「か、描いて…み…た【ゴシゴシゴシゴシ】あっ!?あっあっあっあっあっあっ」


「オートでピープルズ・アイブローってんじゃ〜ん!先端行き過ぎい〜マジヤベェじゃん!マジでザ★ロック様じゃね?【ゴシゴシゴシゴシ】「あっあっあっあっあっ」


 親指の腹で、描いた眉毛をゴリゴリ消してる…良いのか?あんな消し方して…


「ちょっと直すし、これヤバイし」「あっあっあっ」


 そしてタナカナは京極に連れて行かれた。

 残ったのは俺とザ・ブドーのなり損ないこと、武蔵野だ。


「田中さん、可愛いからな。羨ましいぜ。俺も彼女欲しいな」


 だったらそのままムカつく面からパイポ出すのやめろ、そもそも面を被るなとは言わない。

 俺は陰キャだからな、ただ、立ち去るのみ。




 朝礼が始まるまで、俺は机に突っ伏していた。

 武蔵野が何か音声を発していたが俺は陰キャだから、静かにしてないとな。

 

 ガラララララララッ!


 誰か教室に入ってきた、クラスがザワつく…アレはまさか…


 入ってきたのはギャル…白ギャルだ…

 前髪が短く切り揃えられ、ツインテールにして…顔は白め、まつ毛はガッツリ上がり目に青のアイシャドウ…唇はグリーンの入ったピンクのリップ…美少女ではあるが、まるでどこぞのアニメキャラだ…そして俺はもしかしたら…と思っている。


「うお?ありゃ学園のアイドルだゼ」


 何だと!?名前どころか顔すらぼんやりしていたヤンキーが呟いた…学園のアイドル…だと…?

 

 あれは…アイツは…本当に…本当にアイドルに…


 美少女が近付いてくる…ウチの制服はブレザーだが上着が胸が隠れる程度の長さしかない…その上着のボタンは全開で、中のシャツも限界まで開いている。

 ハイウエストのスカートを上げすぎてほぼ股が見える程スカートが短く、上げすぎたハイウエストのの上部が胸を押し上げまるでアンナミラーズじゃねぇか?


「な、なんですか?」


 俺は緊張しながら問う。

 すると学園のアイドルと言うよりかは白ギャルアニメキャラがスマホを見ながら呟いた。


「えーっと、テメーコクレシ?スキッテ…イエティ?」


 日本語じゃない何かを俺に言ってきた白ギャル…最後のイエティは何かの隠語か?白ギャルだけにイエティ…


「ん!?んん!!」


 謎の美少女…多分タナカナが走って去っていった…謎の音声を発して消えた為に…謎だけが残った…

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