第3話

「んがー!もう1件行きましょうよー!」

「いやどんだけ飲むんですか…」


えー、彼女は酒豪だった。

生中1、生大2、ウィスキーのロック4、日本酒徳利3、ワイン750のボトル1…。

少なくとも俺の倍は飲んでる。なんでそれで俺より元気なんだよ…。


「あ、そういえばお名前聞いてなかったね、うちは迫田 香織言うんよ〜」

「そういやそうですね。自分は齋藤 遥斗です」

「遥斗くんか〜、いい名前だなぁ、響きが好きだなぁ」

「ありがとうございます…?」


褒め…られてるのか?まぁ素直に褒められたと思っておこう。

彼女もとい香織さんはにこにこしながらGo〇gle Mapを見せてくる。

見せてきた店は朝までやってる大衆居酒屋。


「ここどう?朝までやってるよ!!」

「えっ…と…行きます?」

「よし!いこー!」


肝臓無敵すぎる…。

今日で死ぬぞ…俺の肝臓が。

明日から身体に気を使おう。改めて思った。


---


「遥斗くん飲んでる〜?」

「まぁ飲んではいますよ…あ、この煮付け美味しい」

「え、ちょーだい」

「どうぞ」


正直言おう。もう脳みそが考えることを拒否し始めた。

香織さんのペースは少なくとも俺の3倍。

にっこにこしながら酒を飲んでる。

んでおつまみやらも結構食べてる。

え、細身の身体にどんだけ詰め込んでるんですか…?


「店員さ〜ん!賀〇鶴人肌くらいで〜!」

「はいよー!にしてもおふたりさんよく飲むねぇ…」


店員さんちょっと引いてるって。

いや店員さんに訂正したい。

7割8割は香織さんだぞこれ。食べ物も半分くらい食べてるし。


「いや〜楽しいねぇ〜」

「楽しそうでなによりですよほんと」

「まぁ酒がないと元彼へのイライラとまらないからねぇ!!!」


ほんとそれ。まじでそれ。

まぁ人間だからしゃーないよ?でもさぁ…もうちょいタイミングとか考えーや…。


「ってかあと1時間でこの店閉まっちゃうんだけど〜」

「え?あ、もう5時なんですね」


終電から始発の間の営業の居酒屋は珍しいけど有難いよね。

実際20歳になってからは年に何回かお世話になる。


「どうしよっかぁ、そろそろお開きしちゃう?」

「そうですね…もうそろですもんねぇ」

「遥斗くんのこっからの予定は?」

「いゃーなんも考えてないですね、行き当たりばったりでって感じで」


明日までフリーだからなぁ。

いゃー今日明日休みで良かった。

二日酔い確定だからなこんなん。


「あ、遥斗くん、連絡先交換しよ〜!」

「是非是非」


LI〇E交換した。

アイコンも背景?も猫まみれ。猫かわいい。


「じゃあ今日はありがと〜ね〜!また飲もうね!」

「こちらこそありがとうございました!是非お願いします!」


にっこにこしながら手をぶんぶん振る香織さん。

最初のイメージとはほぼ真反対の面白い人だったな。

散々手を振ったあと、朝の駅前の人混みに颯爽と去っていった。


とりあえず聞きたい。

あんだけ飲んでなんでそんな真っ直ぐ歩けるんですか…。

俺もうフラフラですわ…。

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相席居酒屋でやけ酒してたら彼女が出来た話 紗倉 伊織 @nekoiesakura

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