第28話 それはちょっとオレ様な貴方には似合わない


 火曜日。


 昼休み、外に食べに行く者も多く人気もまばらなデスクの周り。


 鷹田が夢乃に近づくと、「お弁当はあげませんよ」と制される。


「夢乃、俺を侮るなよ」


 鷹田が取り出したのは夢乃のが作った料理を詰めた弁当箱。日持ちするカレー味のお惣菜と自分で炊いたご飯とが詰めてある。メインは冷凍しておいたごぼうの肉巻きだ。


「自分で詰めたんですか⁈」


 ——に、似合わない!


 と思いつつも鷹田にドヤ顔されると弱い夢乃。


 一方で、驚いた夢乃の顔を見て、鷹田は満足げである。


 なんといっても夢乃の手作りの物は美味しい。それを伝えるべく慣れない弁当の用意をして来たのだが、夢乃は驚きすぎて鷹田の話を聞いていなかった。


 ——似合わない。似合わないっ! こんなことなら私が作った方がまだマシじゃない!?


 鷹田は自分の話を夢乃が全く聞いていないことに気がつき、ショックで口を閉ざした。


「——あ、鷹田さん何か言ってました?」


「いや、なんでもない」


 とりあえず夢乃の近くで食事が出来たことに変わりはない。


 ——い、一歩前進としよう。





 つづく

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