第21話 二人は複雑な関係です
金曜日の夜。
付き合っていた時は外食が多かったので夢乃は今日は地味な和食にしようかと考える。
ちなみに先週も無理にお泊まりさせられたから、コンビニで揃えたお泊まりセットはそのまま置いてあった。
夢乃は買ってきたものと冷蔵庫に残っていたもので夕食を作り始めた。と言っても冷蔵庫にはさほど食材は残っていなかった。
カボチャを薄くスライスしてオリーブオイルで焼き付ける。これは付け合わせ。
ピーマンと厚切りのベーコンを塩コショウで炒めて箸休めを作る。
メインは豚肉をニンニクで香り付けして甘辛く仕上げた肉炒め。みどり鮮やかな小ネギを散らして、そばにカボチャを添える。
ベビーリーフと豆腐のサラダを作っているうちに始めに仕込んだご飯が炊き上がる。今日はシンプルに白米だ。
豆腐のサラダには海苔としらす干しを散らしてドレッシングをかける。
「出来ましたよ」
鷹田にも手伝わせてテーブルに料理を並べていく。
「いただきます」
二人で手を合わせて食べ始めれば、鷹田の箸が止まらない。
決しておしゃれではない素朴な料理を、どこか嬉しそうに食べる鷹田に、夢乃は複雑な気持ちになる。
思えばこういう簡単料理を出したことはなかったな、と夢乃は振り返る。それに鷹田がこういうのも好きだったのかと驚きもする。
食事に関して言えば、いつも凝った料理を作ることを考えて疲れてばかりだった。後片付けも自分がやらなきゃと気負っていたけど、こんなふうな関係になれば逆に鷹田も手伝ってくれてスムーズに終わる。
——前より優しい? 違う、過ごしやすいんだ。
夢乃は少し気楽に過ごしている自分に気がついた。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます