第19話 強引な元カレに連れていかれちゃいます


 昼休み。


 昼食の為に立ち上がる夢乃ゆめのよりも先に、鷹田たかだがそばに来て声をかけてきた。


「夢乃」


「職場で下の名前を呼ぶのはやめてください」


「昼は?」


 夢乃の抗議をスルーして鷹田は尋ねてきた。


 ——ひとの話を聞いてよ!


 ツッコミ入れたいのをこらえて夢乃は立ち上がりつつそばにあった外出用のかわいいバッグを手に取る。


「金曜日はお弁当作らないに日してるんです。外に——」


 外に食べに行くから、鷹田さんは勝手にすればいい、と言おうとしているのに、鷹田にさえぎられる。


「わかった。行こう」


 一緒に行くなんて一言も言ってないのに、鷹田は当然のように夢乃をエスコートする。


 ——ちょっと持って!


 と思っているうちにさりげなく背中を押されていつの間にか会社近くのカフェに連れて行かれる。


 いつか二人で来れたらいいね、と言っていた店だ。会社に近すぎて他の社員の目が気になるから来たことがなかった。


 ——よりによってココを選ぶの?


 もしかして夢乃の言葉を覚えていたのだろうか?


 夢乃はそっと鷹田を見上げたが、逆光でよく見えなかった。






 つづく

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