第7話 オレ様彼氏が心配そうに見つめて来ます
不覚にも
——朝早くに帰ればいっか。明日は土曜日だし。
気がつけば鷹田は夢乃が作った雑炊を食べ終えている。そこでようやく夢乃は自分の空腹に気がつく。
——近くに24時間スーパーがあったはず。
あとで買いに行こう。
そう思って片付けをしていると、鷹田がミネラルウォーターを取りに来た。ペットボトルのやつだ。
洗い物をしながら何気なく横目で見ていると、何か病院でもらう薬を手にしている。
——やっぱり体調が良くないのね。
鷹田は飲むかどうか迷っているらしく、ちらちらとこちらを見て来る。
「なんですか?」
夢乃に声をかけられて鷹田ははっとする。薬飲んで入った袋を隠そうとするので夢乃は無理やり取り上げた。どうやら眠くなる系の薬らしい。
「これ、ちゃんと飲んでください」
「う……でも」
「なんです?」
「これ飲んで寝たら、夢乃は帰る……だろ?」
いつもは夢乃を見下ろして来る瞳が本気で心配そうに見つめて来る。夢乃に帰ってほしくないのだ。
——こここ、こんな鷹田さん、見たことない!
ちょっとだけ、こころがグラつく。
——違う違う! 私は倒れてたひとを助けただけなの!
冷静になれ、夢乃。
ここにいる男はイケメンで仕事ができて強引でエスコート上手でモテて——でも他の女性を目の前で口説いてたヤツだ。
「わ、私お腹すいたからそこのスーパー行って来ますね」
慌てて上着をつかむとそのまま鷹田の顔を見ないようにして玄関へ向かおうとした。ところがその手をグッと掴まれて引き戻される。
「——っ!」
「行くな」
——ももも、もうヤダぁ!
「放してください!」
夢乃が強めにそう言うと、鷹田は少し首を傾げた。それから気がついたように手を放して、
「俺も行く」
と低く言った。
つづく
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