第2話 地味女だって本気で怒ることだってあります


 金曜日。


 本当なら昨夜のうちに金曜の夜から週末をどう過ごすのか、夢乃と連絡を取るつもりだったが、連絡手段を封じられた鷹田は不満顔で出社した。


 ——まさか着信拒否にしたのか?


 少し不安があるが、夢乃のことだ。謝れば許してくれるだろう。


 鷹田はそう思って席に着く。椅子を回して横を向けば、隣の部署に夢乃の席が見えた。まだ来ていないらしい。


 イライラする。


 夢乃の声を聞かないと落ち着かない。あの明るい笑顔を見ないと心が休まらない。


「おはようございまーす」


 耳に馴染んだ優しい声が聞こえてくる。夢乃だ。


 ——良かった。さっさと話をしよう。


「おい更科く……」


「おはようございまーす」


 同僚に挨拶するように彼女は声を出して、完全に鷹田の呼びかけを無視した。


「あ、なあ……」


 さっそうと自分の机に向かう夢乃の背中に、鷹田の弱々しい呼びかけはぶつかって砕けて散った。


 ——う、ウソだろ。


 あの夢乃が俺を無視した?


 やや呆然としながらもそっと夢乃の様子を見ているが、一度も視線を合わそうとしない。なんなら鷹田の方を絶対に見るもんかという意思さえ感じる。


 ——え? マジで怒ってる?


 鷹田の顔からサーっと血の気が引いた。




 つづく

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