憑依

鬼ケ原龍左衛門

第一話 始まり

高校3年生の夏休み、部活の為に学校へ登校していた。俺は4歳の時から地域の郷土芸能をやっていて、和太鼓も叩いてみたいという理由で和太鼓部に所属していた。この日は自主練習の日だったが、数カ月後にやる祭りでいくつかの太鼓チームと合同で新曲をやる事になっていた為、早く覚えて上手に叩けるようになりたいと思い、練習をするために学校へ来た。部活をしている場所は学校の校舎とは異なり、別館の部室で部活をしていたので、学校へ到着した後に職員室へ行き部室の鍵を貰いその場所へ到着した。飲み物を数本買い、騒音対策の為、カーテンを全締めをして扇風機をつけて練習をし始めた。



「まずは基礎練習からだなぁ…」



つぶやきながら基礎練習をしていた。閉めたはずのカーテンとドアが何故か全開でカーテンもドアの半分位しかかかっておらず、廊下が丸見えの状態だった。まぁ良いかと思いそのまま30分間基礎練習をしていた。10分間の休憩をしてから、覚えたての曲を数曲、確認しつつ太鼓を叩いていた。数十分後、休憩する直前に最初に覚えた曲を叩いていた。疲れ来ているというのもあり、斜め上を見ながら叩いていたのだが、何か視線を感じると思い、前を向いた。見覚えのない女性がこちらを穴が開くんじゃないかって思う位凝視しているのが見えた。顔色は青白かったが、かなりの美人な顔立ちをしていた。かなり長めのボブで顔もシュッとしており、目がバッチリしていた。しかし、目の奥が完全に笑っていなくて、生気がなくかなり怖い目をしていた。この時、この世のものでは無い幽霊だなと思ってしまった。物凄くびっくりしていて動揺していたのもあって金縛りのように動けなくなってしまっていた。数秒見つめあった後、玄関からガチャっと開く音がして、この音と共に霊が見えなくなり、体が動くようになった。



「来たぞー!!!あれ、鬼ヶ原の靴じゃね?」



と声が聞こえた。



「おーい!オニいるー?」



と声が聞こえた。声で同じ学年の吾郎と佳乃の2人が来たというのが分かった。部屋に入って来た瞬間俺はこう聞いた。



「え、誰か廊下いた?」



「今来たばっかやし、おらんかったぞ。どしたん?」



と吾郎に返答された。やはり俺しか居なかった。あれは一体なんだったのか。疑問点ばかりだ。



「いや、なんでもない。」



と俺言い、その時はなんか変なもん見たなぁ程度に捉えて3時間ほど自主練習を行い帰宅した。




夏休みが終わり少したった頃、いつものように部活をしていた。この日は雨が降っていていつもよりも風が強く、外にある木々がバサバサと窓ガラスがバタバタと音を立てていた。3年生は俺以外は委員会や係でおらず、顧問がいる中俺、後輩数人で和太鼓を叩いていた。




「今日、マジ風強いな。」




「ほんとにね。電車止まらんと良いけど…」




「風強いし、ここおばけ出るって聞いたからちょっと怖いかも…」




と後輩の一人がボソッと話した。




「いやぁ~、こんな時に学校が電話がなったら怖いよなぁ。」



「ちょっと怖い事言わんといてよ。」




なんて冗談を言った途端、どこからかジリリリリと電話の音が1コールだけなった。びっくりしつつ冷静に生徒をなだめる顧問、怖い事が起きて大興奮する生徒やめちゃくちゃ慌てる生徒、あまりの怖さに泣き出す生徒でカオスな状況になってしまっていた。少しして落ち着いたと思った束の間、また1コールなった。どこからなっているのかと探した結果、隣の調理場の休憩室にある黒電話からなっていることが分かった。探している間にも十数分に1回、1コールのみなっていた。




「ちょっと次なったら俺、電話出てみるわ。」




と良い、電話が鳴るまで待った。そして数分後、その時がやってきた。電話がなった瞬間、受話器を手に取り恐る恐る耳を当ててもしもしと声をかけた。しばらくザーっと砂嵐のような音がなっていたが少し経ってからその音が聞こえなくなり、無音が続いき電話入れたのかなと思った数秒後、




「…くん…くん…」




「は、はい?すみません聞こえないのでもう一度お願いします。」




「龍くんみーつけたぁー!!!あは、あはははは!」




と聞こえ、とっさに叫びながら受話器を投げ捨てた。この声を聞いた瞬間、夏休み中に見たあの霊だと一瞬わかり震えが止まらなかった。あまりの怖さに震えていた。トイレに行くと良い、廊下をある行きトイレついた瞬間、俺はまた叫んだ。誰も全く

使わない部屋が鍵も空いてないのにいきなり電気が勝手に付いたからである。顧問の先生にこれ以上部活をするのは危険だと良い、この日は部活を早く切り上げた。この日は流石にやばいと感じ、軽くお清めをした。




数日後の授業での事。音楽の授業でリコーダーを演奏の練習をしていた時の事。4時間目で午前中最後の授業の時の出来事である。俺が教室にリコーダーを忘れた事に気付き



「先生〜、リコーダー教室なんで取りに行ってきまーす。」



と言い、教室へ向かった。教室は小テストをしていたり、実業高校だった為に外で実技実施があったりとかなり静かだった。教室まではそこまで距離も無かった為少し歩いたらついた。後ろのドアから入った瞬間、前の扉の辺りからフフフ…と女性の声のような音が聞こえた。どこかで聞こえた声だなと思い、思い返したら数日前に聞こえた声と全く同じで夏休み中にはっきり見た女性の霊を思い出したのだ。その瞬間に激しい頭痛に動悸、血の気が引くような感覚になり、その場にうずくまってしまった。脳内では女性の声で



「ねぇ、聞こえてるよね?見えてるでしょ?」



と脳内で女性の声が絶え間なく聞こえていた。そのうち、体全身に力が入らなくなると同時に意識が朦朧としていく。意識が完全に無くなる直前に来るのが遅いと感じて見に来た先生と男子生徒が2人来たのだ。先生が来た瞬間、辺り一面無く真っ暗になってしまった。



「え、ここどこ!?いや、さっきまで教室にいたよな?」



と慌てながら状況整理をしていた。そしたらどこからともなく声が聞こえてきた。



「私のこと思い出してくれたんだね。嬉しいなぁ楽しいなぁ〜。フフ、フフフフフ。」



などと教室で聞こえてきた笑い声と同じ声で絶え間なく聞こえてくる。俺は当たりを見渡しながら走り回った。



「お前は一体誰なんだ。俺に何をした。何が望みなんだ?なぁ、なんかいってくれよ!」



そう問いかけながら声が枯れるまで叫んだ。



「お願いだ。俺にはもうか関わらないでくれ。もうおかしな事になりたくないんだ!お願いだ!土下座でも何でもする。この通りだ!許してくれ!」


と最後に足を止め、深々と頭を下げ土下座をした。


「えぇ〜やーめなーい(笑)。だってあんたといると楽しいし、それに一緒ににいると落ち着くからねぇ。安心できるからさぁ、このままでもいいでしょう?それにちょっかい出すといい反応するんだも〜ん♪」


と言われた確かに夏休み中や終わった直後も、学校や私生活でも違和感があった。誰かに追いかけ回されているような感覚や、所々の記憶が無くなったりしていたので、プチンとキレた。



「あのなぁ!」



と言った瞬間、後ろから肩を叩かれ後ろを向いた。その瞬間、夏休みに見た霊がいてかなりの勢いで近付いて来た。そしてそのままの勢いで口づけをされ、その場に倒れてしまった。



「あああーーーー!!!」



と同時に叫びながら起き上がった。(あれ?)と思いながら辺りを見渡す。何故かベッドの横に座っている。ふと目を向けると学校のマドンナと呼ばれている同じクラスの一花という付き合っていた彼女がいた。



「あれ、一花???なんでここに…???」



と問う。



「だって、4時間の時に倒れて放課後になっても、魘されて起きないって聞いたから本当に心配で…」



と言いながら泣き始め、手を握りしめた。話をしていると保健室担当の荒木先生がカーテンを開けながら入ってくる。



「鬼ヶ原、起きたか。」



「あ、荒木先生…ってかあれ?リコーダーを取りに教室に戻った後、倒れて…あの子は…一体…」



「なぁ鬼ヶ原、これから一枚の絵を見せる。本当に正直に答えろよ。」



「あ、はい。分かりました。」



「この顔に見覚えはないか?」



と一枚の女性の顔が描かれた髪を見せられた。見た途端、近くにあったビニール袋に思いっきり嘔吐してしまった。



「やっぱりか…」



と保健室の先生に頭を抱えながらボソッと言った。



「え、なんかあったんですか?」



と彼女が先生にすごい心配そうに問う。少し間があったがゆっくり口を開きこう言った。



「少し長くはなるが全部聞くか?もし聞くのであればそれ相応の覚悟を見せて貰う。恐らく、これから一花にも被害が出るかもしれん。それでも良いか。」



「はい。全て聞かせてください。」



と彼女の目は嘘偽りの無い目をしていた。



「鬼ヶ原もいいか?」



「はい…」



と今、どのような状況なのか、何があったのか等、全てを話すらしい。



「まず、今どうなっているのか話そう。鬼ヶ原、あんたは今かなり危険状態だ。」



「危険って具体的にどのような感じですか?」



と一花が問う。



「さっき見せたあの絵。おそらく、夏休みの部活中に見ただろ。顔の特徴、一致してる…よな?」



「は、はい。何故わかったんですか?それに何故…」



とあたかも自分が見たかのようにそっくりだったので少々びっくりしたのだが、俺は気になったので聞いてみることに。



「あれがかなりの悪霊でな。鬼ケ原が出す波長とあの悪霊が出す波長がピッタリでな。完璧に取り憑いてるんだよ。取り憑くを通り越してへばりついてる。並大抵のお祓いじゃ効かんだろうな。けとほっておけば、どうなる事か。ほぼ確実に身の回りにも被害が拡大するだろうな。今、鬼ケ原だけに被害が留まってるのが不思議なくらいだ。」



「え、じゃあどうすれば…」



と俺は頭を抱えた。今のままでは駄目。だけど、普通のお祓いは効果が無い。一体どうすればと悩んでいたら、一つ、可能性があるととある提案を提示してくれた。


「何も手が無い訳でもない。一つだけ霊を祓える可能性がある方法があるのだが、やってみるか?ただこの方法はかなり危険だ。それでもやってみるか?やる時は必ず2人で行く事。いいな?」



「はい。わかりました。」


と覚悟を決め、話を聞くことにした。その方法とは、まずなんでも良いからぬいぐるみを持って、青森県にある恐山の麓にあるとある霊媒師の所へ行き、鶏の心臓とと米が入っている瓶、塩を貰う。そして持ってきたぬいぐるみを切り、全て綿を抜いて渡された瓶の中身を全て入れる。自分の髪の毛、血を数滴も入れ、赤い糸で切った所を縫う。そして日本酒を口に含み、人形に2人で勢い良く吹きかける。そして祭壇がある所で御経を唱え、その人形に霊を降霊の儀を行った後にその人形をもって恐山を一周する。そして霊を供養するための石碑や御神体がある母屋でお祓いの儀式を行った後に離屋敷で1泊をする。必ず外には出ては行けないという。必要な物は事前に準備をして、足りないものは誰かが持ってくるらしい。最後に使ったぬいぐるみの供養を済ませて終わりという流れになるらしい。



「なんでこんなに詳しいんですか?」



彼女が素直に聞いた。確かにあたかも経験したかのように詳しく説明をしていたから気になった。



「いやぁうちもな、霊感があって高校の時に似た経験があってな。取り憑かれた時に祖母がやってる所で除霊をしてもらったんだよ。その人の度合いによっては異なるらしいが、基本的に同じ事をするらしいんだよ。」



まさか保健室の先生も似た体験をしていたらしい。今の旦那さんと今言われた事を体験したらしく、取り憑かれた霊を除霊するべく青森まで行ってこの事を体験されたらしい。



「今見た感じかなりヤバめだからもしかしたら3泊位はするかもしれないな。まぁ、どうするかはあの婆さんしだいだな。除霊の件、今週の4連休ににやってほしいって連絡しておく。明日の放課後、またここに来てくれないか。」



「分かりました。」



「今日は私が家まで送っていく。あまり二人が離れるのは良くないから、今日から彼女は鬼ヶ原の家に滞在して貰う。事が終わるまで一緒に住んでもらう。生活は基本的に2人で行動する事。良いな。」



「ちょ!?なんで!?!?」



ほんの数日間だけだが、同棲するという話を聞き2人は赤面しながら声を荒げる。



「これ以上被害を拡大させないためだ。あんたら2人でいると、何故かあの霊はあんたらに、そこまでちょっかいは出してこない。だからこうやっているのが一番得策だからだ。分かったか?」



「は、はい…」


そして数日間、急ではあるが同棲生活が始まったのだ

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憑依 鬼ケ原龍左衛門 @onigawara-ryuzaemon

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