第2話 異世界への召喚①-王国サイド-

一方その頃、異世界のとある王国。王城の奥深くで、厳かな召喚の儀式が行われていた。広々とした石畳の儀式場には、古代の文字がびっしりと刻まれた巨大な魔法陣が浮かび上がり、その上で不気味な光が渦を巻いている。儀式を取り仕切る召喚者たちは、真剣な表情で呪文を唱え、額には緊張の汗が滲んでいた。


「これで…これで真の勇者が現れるはずだ…!」儀式の主催者である長老が低く呟いた。声には期待と不安が交じり合い、周囲の召喚者たちもそれに共鳴するかのように、黙って頷いた。


「主よ、この王国を救うために…どうか力を貸してください…」一人の召喚者が祈りを捧げるように呟いた。


「おお、どうか成功してくれ…!」別の召喚者が、手を胸に当てて震えながら願った。


魔法陣の光が徐々に強まり、空気がピリピリと震え始めた。城の壁が低く唸りを上げ、床が微かに揺れ、儀式は最高潮に達しようとしていた――その時、異変が起きた。


「な、何だ…?!」突然、魔法陣の光が一気に激しさを増し、形が歪んだ。まるで何かがおかしいとでも言うかのように、光はさらに強烈に輝き、儀式の場全体が眩しい白光に包まれていった。


「どうしたのだ!?こんなはずでは…!」長老が焦りの色を隠せずに叫んだ。


「エネルギーが…暴走している!これでは…!」別の召喚者が声を震わせながら続けた。「このままでは、儀式が崩壊してしまう!」


「何とかしろ!早く!」長老が周囲に命じるが、光の暴走は止まるどころか、ますます激しさを増していく。


「くそっ!止まれ…!」一人の召喚者が必死で呪文を唱え直そうとするが、魔法陣の歪みはもはや修復不可能な状態になっていた。


次の瞬間、光が爆発するように広がり、その場にいた全員の目が眩む。光の中から現れたのは…見慣れない若者だった。


「…誰だ、こいつは?!」一人の召喚者が驚愕の声を上げた。「こんな者を呼び出した覚えはないぞ!」


「まさか…儀式が失敗したのか…?」別の召喚者が困惑した表情で呟いた。


「いや、失敗というより…これは一体どういうことだ?」長老が額に手を当て、状況を理解しようとするが、答えは出てこない。


神田 叶都は、目の前に広がる異様な光景に呆然と立ち尽くしていた。豪華な装飾が施された広間、そして自分を取り囲む異国風の衣装を身にまとった人々。現実感がまるでない状況に、彼は混乱し、心臓が激しく鼓動を打つのを感じた。


「ここは…一体どこなんだ…?」叶都の口から漏れた言葉に、周囲の人々が顔を見合わせた。


「これは一体どういうことだ?」長老が震える声で問う。「この者は真の勇者ではない…!」


「まさか、異世界のただの者を…?」一人の召喚者が恐る恐る口を開いた。「我々は…何をしてしまったのだ…?」


叶都は混乱しつつも、何とか状況を理解しようとした。「あの…ここは…どこなんですか…?」彼は不安げに尋ねるが、周囲の者たちはそれに答えることなく、ただ沈黙していた。


王国の関係者たちは失望と困惑を隠せない。期待していた真の勇者ではなく、儀式の暴走が生んだこの結果に、彼らの心には暗い影が差していた。

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