第27話 お姉さんの奢りでプールデート
「はあ……暇だ」
クーラーの効いた部屋で寝そべりながら、だらけた夏の午後を過ごす。
今日は佳織姉さんも仕事の打ち合わせで家におらず、家事もあらかた終わってしまい、やる事がなかった。
外に出ても今日はクソ暑いし、このままクーラーの効いた部屋で過ごすかな……
「って、それじゃあすっかり駄目人間じゃないか!」
ベッドの上で惰眠を貪ろうとしたが、あまりの自堕落っぷりに自分でも引いてしまい飛び起きる。
いかん、このままでは本当にニート一直線だ。
だが、もう車の免許も取ってしまい、他にやりたい事もないので、家事や買い物が終われば、ただ遊んで寝て過ごす以外にない。
佳織姉さんも夏コミ近いし、他に仕事が色々入っているみたいなので邪魔しちゃ悪い。
やっぱり寝るかな……とその前に、何か冷たい物でも飲むか。
「ん? 郵便でも来たか?」
玄関の前を通ると、郵便受けに何かチラシが挟まっていたみたいなので取ってみる。
「なになに……何だこれ? スポーツジムのチラシか」
チラシを見ると、どうやら近所にスポーツジムが出来たらしく、その広告であった。
今なら入会金無料ね……どうしようかなあ?
暇だし、健康の為にもスポーツくらい……中学の時は運動部だったけど、それ以来、まともにスポーツしてないんだよな。
でも月額の会員費が七千円近くするのか。
当然、佳織姉さんにねだることになってしまうが、流石に気が引ける。
だけど運動不足は何とか解消したいし、このまま引きこもっていたらストレスが溜まって仕方ない。
帰ってきたら一応、話してみようかな。
「ただいまー」
「あ、おかえりなさい」
それから一時間後に佳織姉さんが帰宅してきたので、
「あのー、さっきこんなチラシが郵便受けに入っていたんですけど」
「んー? 何これ……ああ、スポーツジムのチラシね。最近、近所に出来たらしいね」
「はい。最近、運動不足ですし、その……」
「入りたいの?」
「えっと……ちょっとだけ興味があるというか……」
決して安いお金ではないので、あまり強くおねだりは出来ないが、駄目元で頼んでみる。
もちろん、佳織姉さんがお金を出せないなら、それでも構わない。
最悪、自費で……って、俺の金は彼女から貰ったお小遣いなんだけど、余っているから一年くらいは
「うーーーん、確かに桜さんなんかも、ジム行って運動不足にならないようにしているって言っていたし、あんまり引きこもるのも良くないよね」
「じゃあ……」
「まあ、考えておこうかな。それより、プール、いつ行こうか? 明日、暇だから明日にでも行っちゃう?」
「そ、そうですね」
ちゃんとした答えは得られなかったが、まあ安い金額じゃないし、生活に必要な物でもないので、無駄な出費は出来ないは当然か。
ま、無理なら無理で良いか。
「あ、水着どうしよう……」
「そっか。水着、今から買って来ないとね。私は前に買ったのあるけど」
「そうですね。もう涼しくなってきましたし、行って来ましょうか」
水着は実家に行けばあるのだが、佳織姉さんの家に来る時、水着なんか持って来なかったので、二人で買いに行く事にする。
楽しみだなあ、佳織姉さんの水着。
翌日――
「うっひゃあ、暑いねえ」
「ですね」
まだ昼前だったが、二人で家を出ると、夏の猛烈な陽射しが体を差し、汗が一気に出る。
七月だってのに、暑いなあ。
「今日は絶好のプール日和♪ しかも平日だから、多分そんなに混んでないよ」
「だと良いですね」
二人で手を繋ぎながら、プールへと向かうが、やっぱり暑いのは苦手だ。
「うっひゃあ、混んでいるなあ」
プールに到着すると、かなりの人で賑わっていたが、今日は平日でまだ夏休み前なのにこんなに人が居るのかよ。
今、学校は期末試験が終わった頃かな?
何だか遠い昔の事の様に感じてしまうが、まさか
「お待たせ」
「あ、佳織姉さん」
「へへ、どうかなこの水着?」
水着に着替えた佳織姉さんがようやく来たが、あまりの可愛さに思わず釘付けになる。
可愛らしいフリルの付いたビキニで、髪も結ってあり、いつも以上に眩しく見えてしまった。
「可愛いですよマジで。もう最高です」
「もう、褒め過ぎ。へへ、じゃあ入ろうか」
「はい」
素直にそう褒めちぎった後、佳織姉さんと一緒に流れるプールに入る。
いやあ、こんな可愛い彼女とプール入れて最高だな。
「佳織姉さん、泳ぎはどうですか?」
「昔は二十五メートル何とか泳げたけど、今はあんまり自信ないかなあ。裕樹君は?」
「俺も似たような物ですかね」
泳ぎは人並み程度で、特に得意とか不得意でもない。
一応、百メートルは泳げたが、今はどうかなあ……。
「ふふん、でもこうやって水に浸かってるだけでも楽しいね」
「ですね。あー、でもたまには思いっきり泳ぎたいなあ」
流れるプールで、浮き輪に捕まりながら、佳織姉さんと流されていくが、たまには競泳用のプールで思いっきり泳いで見たい。
その方が気晴らしになるだろうと思っていたが、佳織姉さんは浮き輪に捕まりながら、
「うーん、ジムに行きたいってなら、通っても良いけど、あんまり通いつめて、家事がおろそかにならないようにね」
「良いんですか?」
「うん。運動不足は体に良くないしね。てか、私もちょっとだけやってみようかなって……めっちゃ、運動不足だし」
確かに佳織姉さんとか見たままのイメージ通りに運動はしないし、正直、引きこもってばかりで大丈夫なのかと思う。
でもスタイルは良いんだよな……あんまり、食べないからか?
「じゃあ、今度はウォータースライダーに行こうか」
「あ、はい」
一周終わったので、今度は近くにあるウォータースライダーに行く事にする。
「きゃああんっ♪」
ザブウウンっ!!
佳織姉さんを膝の上に乗せて、一緒にウォータースライダーを滑り、下のプールに滑り落ちる。
いやあ、佳織姉さんの太股柔らかくて良いなあ……ついでに胸も少し触ったし、正に役得。
「くす、もうさり気なく変な所、触ったでしょう?」
「え? はは、すみません、つい……」
「んもう、じゃあもう一回だ」
「はい」
思いっきり胸を触ったことバレていたみたいだが、もう一度、佳織姉さんとウォータースライダーをすべることにし、その際も
「やん、もう抱きつきすぎ」
「へへ、じゃあ行きますよ」
「きゃっ!」
佳織姉さんの腰に思いっきり密着し、太股もさりげなく触りながら、滑っていく。
周りの目が少し気になったが、当人が怒っていないので気にしない気にしない。
「いやー、プールで食べるラーメンって美味しいね」
ウォータースライダーや波のプールなんかも行った後、フードコートで少し遅めの昼食を二人で摂る。
もちろん、佳織姉さんの奢りなんだが、もはや慣れてしまい、罪悪感も湧かなかった。
「水泳って何か疲れちゃいますね」
「だよねー。でも、まだ暑いし、もうちょっと涼んでから帰ろうか」
「はい。へへ、今度は一緒にジムに行きましょうね」
「考えておくね。じゃ、一緒に頼んだ唐揚げ食べて。食べきれないから」
「あ、はい。ん……」
おかずに頼んだ唐揚げを佳織姉さんにアーンして食べさせてもらい、プールでのデートは過ぎていく。
「ああーー、疲れたあ……ちょっと休もうっと」
夕方になり、家に帰ると、佳織姉さんはグッタリとしながら、自室のベッドに倒れこむ。
俺もちょっと疲れたな。水泳やると眠くなるんだよな何故か。
「プール楽しかったですね」
「うん。あ、裕樹君」
「何ですか?」
「夏コミまでちょっと忙しいけど、それが終わったら、また一緒に遊びまくろうね。そうだ、旅行にでも行こうか」
「はは、そうですね」
そう言いながら、佳織姉さんは微笑みながら、ベッドでそのまま眠りにつく。
そうだ。彼女との夏はまだまだこれからだ。
何も考えず楽しめばそれで良いじゃないかと言い聞かせていたのであった。
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