第16話 お姉さんの奢りで旅行に行く

「んもう、いきなり逃げるんだもん」


「すみません」


 風呂から出ると、頬を膨らませて、佳織姉さんも後に続いて、バスタオル巻いたまま風呂から出る。


「私の体、そんなに魅力ない?」


「ありすぎて困ってるんです」


「くす、じゃあまた見せるね」


「いやっ! もうちょっと待って下さい!」


「はあ……じゃあ、おっぱい揉んで」


「はい?」


「男なら有言実行。ほら」


 と言って、佳織姉さんが頬を赤らめて言って来たので、


「じゃ、じゃあ遠慮なく……」


「う、うん……んっ、んんっ!」


 恐る恐る佳織姉さんの胸に手をかけると、佳織姉さんも俺に抱き付いて、唇を重ねる。


 彼女のふくよかなおっぱいを感じながら、何度目かのキスに没頭し、そのまましばらく二人でキスをし続けていった。


「ん、んん……はあ……今度からは、やる時はちゃんとやる様に。お姉さん、いつも返事を待ってるんだから」


「は、はい……」


 佳織姉さんがやっと口を離すと、俺のおでこに人差し指を付けて、そう注意する。


 駄目だ……甘過ぎて、思考がまた蕩けそうだ。


「わかれば宜しい。じゃあ、私、仕事に戻るから。ちゅっ……」


 優しい笑みで告げた後、佳織姉さんは頬にキスをして、部屋に戻る。


 彼女の柔らかい唇の感触を感じながら、今夜も悶々と眠れぬ夜を過ごしていった。




「ほら、早く」


「は、はい! はあ、はあ……何とか間に合った……」


 旅行バックを両手で持ちながら新幹線に飛び乗り、どうにか時間に間に合った。


「もう、私の分は持つって、言ってるじゃん」


「そうはいきませんよ。お金を出してもらっている以上、この位はやらせてください」


 今日は佳織姉さんと一緒に取材も兼ねた温泉旅行に行く事になり、佳織姉さんの荷物も貴重品以外は全部持って、新幹線に乗り込んだ。


 二泊三日だから、大した荷物じゃないけど、二人分はちょっときついかも。


「んもう、別に良いのに」


「少しでも役に立ちたいんですよ」


 今日は、もちろん佳織姉さんが宿泊費、交通費など全て出している上に、小遣いとして二万円も俺に持たせているので、荷物もちくらいはしないと気が済まない。


「くす、ありがとう。んじゃ、出発」


 出発時間になり、新幹線が動き始める。


 久しぶりだなあ、新幹線なんて乗るの。中学の時の修学旅行以来かもしれない。




「それでさー。あ、これ食べる?」


「いただきます」


 隣に座っていた佳織姉さんにお菓子を貰いながら、まったりと雑談して、車窓からの光景を楽しむ。


 良いなあ、こういう気楽な旅行も。


 いや、佳織姉さんは取材も兼ねているから、立派な仕事なんだよな。


「取材って何するんですか?」


「写真を撮るだけだよ。まあ、その写真を選んで、背景を描かないといけないんだけどね。自分で撮影した写真なら、版権の問題も安心だし。あ、温泉旅館の写真撮る時は、ちゃんと許可取らないとね」


 なるほど、背景を描く為の素材を得る為の取材か。


 だったら、佳織姉さんにとっては重要な事なので、俺もあんまり浮かれてはいられないな。


「くす、そんな難しい顔しなくても良いよ。裕樹君は、のんびり温泉楽しんでいればそれでオッケー。あくまでも付き添いだからね」


「何か手伝える事あれば言って下さいね」


「ありがとう」


 と、笑顔で言ってくれるが、正直、手伝えることと言ってもあまり思い付かないので、何か頼まれたら手を貸す事にしよう。




「うわああ、正に絶景だねえ」


 駅を降りて、温泉地に着くと、目の前に広がる山々を見て、佳織姉さんも目を輝かす。


「うーーーん、正に大自然だねえ。こういう所にいつか住みたいかも」


「佳織姉さんの実家も、こんな感じじゃなかったですか?」


「いや、田舎だけど、温泉はないしー……」


 佳織姉さんの実家は石川県で、金沢から車で三十分くらいの所にあり、山あり海ありの田舎町にあるのだが、温泉はなかったっけか。


「良いじゃないですか、佳織姉さんの実家も。俺、ああいう所に住みたいですよ」


「いやいや、勘弁してよ。娯楽何もないし、冬は雪も凄いんだから。遊びに行く時は金沢まで行かないと、本当、何もないよ」


 と言うが、なるほど、雪はちょっとネックかもな。


 子供の頃、確か冬休みにも行ったが、大雪凄かったっけな。


「一枚、二枚、激写と……後、向こうの景色も使えそうかな……あ、この神社も良いな」


 と、次々と温泉地の写真をデジカメに収めて行く佳織姉さん。


 俺は遊びのつもりだったが、真剣な表情で撮影してるので、彼女はお遊びじゃないのだと思い知ったのであった。




「んーー、良い湯だ……」


 その後、予約した温泉旅館に行き、早速、その旅館の露天風呂に浸かる。


 良い湯だなあ……ちょっと熱いけど、やはり温泉は普通の風呂とは何か違う。


「空いてるな、やっぱり……」


 温泉を見渡すと、客の数はまばらで、凄く静かだ。


 当たり前の話で、今は五月の平日であり、ゴールデンウィークも終わっているので、観光客などそう居るものではない。


 そう考えると、やっぱり気まずいかも……でも、まあ大学生くらいに思われてるんだろう。




「ふう、良い湯だった……」


 パシャパシャ


「ん? 佳織姉さん」


「あ、裕樹くんも出たんだ」


 男湯から出ると、佳織姉さんが近くにあった卓球台や、休憩室を撮影しており、何事かと声をかけると、


「いやあ、女将さんの許可を取って、旅館内の撮影をね。背景に使えるかと思って」


「こんな所まで撮るんですか」


「うん。美少女がお風呂上りに卓球をする絵とか、良いじゃない」


 へえ、そんな事まで考えているんだ。


 イラストレーターも大変だな。取材はついでみたいな事を言っていたが、実際はずっと仕事みたいな物じゃないか。




「んーー、美味しかったね、お料理」


「ですね」


 部屋に戻り、用意された夕飯を食べ終わると、二人でまったりとテレビを見ながら過ごす。


 もう布団も敷いており、いつでも寝れる準備は出来ているのだが、それにしても良い景色だな。


「あの、本当に一緒に寝るんですか?」


「いや?」


「いやじゃないですけど、男女が二人で同じ部屋で寝るのは流石に……」


「くす、いいよ、しても♪」


「う……」


 佳織姉さんが腕を組んで、屈託のない笑みでそう迫ってくる。


 本気なのか、冗談かわからないが、微妙に寝巻きから、胸の谷間をチラつかせているので、明らかに誘っている。


「これで、勘弁してください」


「あん、おっぱい触るだけえ?」


「ちょっと疲れてて……」


 差し出された胸を揉んで、体を密着させると、佳織姉さんも嬉しそうに甘い声を上げる。


「うそー。くす、まあ良いや。ちょっと今日撮影した写真、まとめるから、裕樹君はもう寝たければ寝ても良いよ。あ、有料チャンネルで見たいのあれば、すきなの見て」


「テレビですか……じゃあ、これを」


「ん? いいっ!?」


 佳織姉さんに机に置いてあったパンフレットを指差し、


「これ、アダルトチャンネルじゃない!」


「はい、ダメですか? もちろん、佳織姉さんのお金で!」


 自分でも下衆なお願いだと自覚してるが、敢えて彼女におねだりしてみる。


 一度見てみたかったんだ、こういうの……だが、親には流石に頼めないので、佳織姉さんなら許してくれるかと、駄目元で頼んでみる。


「う……本気?」


「はい!」


「じゃ、じゃあ良いよ……これもお仕事の参考になるかもだし」


 やったああ! 流石、佳織姉さん気前が良いな。




「…………」


 その後、有料のアダルト番組を二人で食い入る様に見つめ、佳織姉さんも放心状態になる。


 いやあ……ちょっと激しかったな……レイプ物だったし、刺激が強かったかも。


「こ、こういうの好きなんだ……」


「ど、どうすかね、はは」


「もう……仕事に戻るから、後は見たかったら、このイヤホン付けて」


「はい……」


 顔を真っ赤にして、頬を膨らませながら、佳織姉さんは俺にイヤホンを渡し、ノートパソコンとデジカメを繋いで、写真編集を行う。


 ちょっと失敗したかな……だが、了承してくれたんだし、佳織姉さんの恥ずかしがる顔が見えたから良しとするか。

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