第11話 久しぶりに高校時代の友人と会う
「んーー、昨日は久しぶりに楽しかったなあ。よし、今日は桜さんの動画を見て、お仕事頑張るぞ」
昼食を摂った後、佳織姉さんは自室に戻り、スマホで動画を見ながら、イラストの仕事に入る。
こうやって在宅の仕事だとお気楽に見えるけど、締め切りもあるしで、大変なんだろうなあ。
俺に出来る事は家事しかないのだろうか。まあ、それで仕事の負担を減らせるのであれば、彼女の家に来た甲斐はあるのだろうと思いたい。
「ん? 松川からか……はい」
『よお、ヒロ』
「松川。どうした?」
『いやー、元気にやっているかなって。今度の休み会わないか?』
今度の休みか……てか、今、毎日が日曜状態なんで、休日も平日もないんだけど、しばらくぶりに松川と遊ぶのも悪くないな。
「良いぞ。何処に行く?」
『取り敢えず、地元の駅前に十二時に集合な。まず、一緒に昼飯食おうぜ』
「わかった」
佳織姉さんの家に来て以来、地元には帰ってなかったが、しばらくぶりに旧友に会いに行ってみるか。
「ギリギリだったな」
「おお、待たせたな」
約束の日になり、松川を駅前のロータリーで待っていると、奴もすぐに俺の前に駆け寄ってきた。
「しばらくぶり。元気していた?」
「まあ、ぼちぼち。そっちは?」
「はは、まあ何とかやってるよ。午前中は教習所に行っててさ。やっと仮免取って、路上教習やったんだよ」
「ふーん」
そうか、松川も自動車学校通ってるのか。
俺もどうしようか悩んでいるが、通うとしたら、佳織姉さんか親に頼まないといけないんだけど、結構高いんだよな。
つか、佳織姉さんも一応免許持ってるんだっけか。オートマ限定らしいけど、車を持つのは流石に金がかかるし、持たなくても生活に困らない場所に住んでるから、あえて持たないのかな。
「じゃあ、行こうぜ」
「ああ」
「ったく、お前も羨ましいよなあ、本当に」
「何がだよ……お前こそ、大学生活エンジョイしてるんだろ」
早速、二人で近くのファミレスに行き、二人でステーキやらサラダやドリンクバーなんかを頼んで、だべりながら、ジュースを飲む。
会うのは卒業式以来だから、一ヵ月半ぶりか……何か、ちょっと見ない間に、垢抜けた感じがするな。
地味なオタクだったのに、明るい陽キャラっぽくなって、少し格好良くなった気がする。
「結構、忙しいぜ、大学も。授業も難しいさ」
「へえ」
と、しみじみとフライドポテトを摘みながら、松川が語るが、俺もそんな大学生活を送りたかったよ、全く。
「なあ、お前が同棲している彼女、どんなの? 写真くらい見せろよ」
「写真ね……見せるだけだぞ」
スマホに保存されていた、佳織姉さんの写真を探して、松川に見せると、
「ああ。うおお、マジで美人じゃん。お前、どんな徳を積めば、こんなお姉さんと付き合える訳?」
「知らんがな。つか、付き合っている訳じゃ……」
ないと言い掛けたが、俺と佳織姉さんの関係を改めて考えてみる。
付き合っている訳じゃないよな? でも、佳織姉さんも俺が彼氏だってのは、否定しなかったし、向こうはどう思っているのか。
「今日、これからどうするんだ?」
「飯食ったら、アキバ行かない?」
「アキバかあ。うん、良いぞ」
久しぶりに松川と秋葉原か。高校時代は、何度か行ってたが、あそこの独特な雰囲気は中々楽しいんだよな
「うーーん、これ欲しいな。あ、これも」
昼飯を食った後、二人で電車に乗って秋葉原に行き、松川が行きつけの同人ショップに行って、奴が真剣な顔つきで物色を始める。
十八歳以上だから、もう問題は無いんだけど、何か微妙にアダルトコーナーは居辛いな。
てか、今日は友達に遊びに行くと告げると、佳織姉さんが俺に三万円も持たせたのだが、遊びに行くたびに小遣い貰うのはやっぱり微妙な気分だ。
まあ、何かお土産でも買うかな。
「あ……」
ショップを回っていると、あるポスターを発見する。
イベントの広報ポスターであったが、そのポスターに描かれている美少女の絵は、佳織姉さんが描いた物であった。
(こんなポスターまで描いているのか)
何て感心していたが、同人ショップを回ると、佳織姉さんがこの前出した同人誌も販売されており、オタクの町だとより身近に佳織姉さんの存在をあちこちに感じることになる。
本当に売れているんだな、佳織姉さんって……何だか一緒に住んでいるのに遠く感じてしまう。
「よし、大量だった。この前のコミショ行けなかったからな」
「コミショ?」
「コミックショットだよ。今月あった即売会」
「ああ……」
この前、行った即売会の名前か。そうか松川は行かなかったのか。
こいつも色々と忙しいみたいなので、これからは高校の時みたいに会う機会もなくなるかもしれないと思うと寂しくなっていった。
「お帰りなさいー」
「ただいま」
夜中になり、佳織姉さんの家に帰ると、笑顔でお姉さんが俺を出迎える。
「へへ、どうだった、お友達との再会は?」
「まあ、楽しかったですよ。夕飯の準備、今すぐしますね」
「大丈夫、ピザを取ったから、今日はゆっくりして。へへ、でも帰ってきてくれて嬉しい。地元に行くって言うから、そのまま帰ってこないかと思った」
「そ、そんなわけないですって」
と、俺の腕を組みながら、そう言って来るが、そんな心配していたのか。
「裕樹君は私のお世話係だからね。へへ、居なくなると干からびて死ぬかも知れないから、今後も宜しくね」
「いや、流石にそれは……」
大袈裟過ぎるだろと思いながらも、佳織姉さんが安心した様に俺の腕に顔を預け、甘えた口調でそう言うと、更にドキっとしてしまう。
俺はこのままずっと彼女と……うん、全然悪くはないな。
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