第5話
「さて。今日は重力魔法について考えようか」
「はい!と、言いたいところなのですが、太陽についての説明と、それから前回は時間魔法がどうのって話ではありませんでしたか?」
「じゃあ、時間魔法から話そうか」
「……まあ、どちらでも構わないですけど」
少女はため息一つついてからそう答えた。
「ではまず、時間について考えようか」
「はい」
「時間とは、何だと思う?」
「え?はい。時間とは私たちが作り出した概念で、1日を正確に判断するための測り。ではないでしょうか?」
「なるほど。まあ、間違いではないね。ただ、物理学においての時間とは、物質が無秩序になることを意味するらしい」
青年はどこからともなくバケツを取り出し、魔法で中を水で満たす。そして、ゆっくりと中身を回した。
「例えば、バケツの中の水を回して渦を作る。すると中の分子は同じ方向に流れることになる。しかし、時間が経つにつれてそのエネルギーが弱くなり、少しずつ分子たちは自由に動き、渦が無くなる。初めは秩序的に動いていた水が、だんだん無秩序になり、動かなく見える。これが、時間。だと言われている。多分。専門じゃないからわからんけど」
「はぁ。なるほど?よくわからないような、わかったような?」
「まぁ、もっと簡単に言うと。時間っていうのは物質が互いに干渉しながら変化する事象を観測することで、初めて認識することが出来るものなんだよ」
「逆に意味がわかりませんけど?」
「例えば、宇宙で物は永遠に真っ直ぐ進む。って聞いたことない?」
「ないですね。そもそも宇宙って何処ですか?」
「宇宙は空の上にある空間だよ」
「空の上には天界があるって話ですけど……?」
「宇宙には空気がないんだ。だから空気抵抗が無くなって、その結果、重力の影響を受けない限りは永遠に真っ直ぐ進む。でも、それがもし逆再生。時間を遡っていたとしたら?暗闇の空間を進む物質が時間を進んでいるのか。はたまた逆行しているのか。それを判断する術はないだろう」
「あの、話を進められても、よくわからないのですが?宇宙に空気がないとはどういう意味ですか?だいたい……」
「……。詳細は省こう。そうだな……。この世のものは全て原子で構成されている。原子の中にも電子とか色々あるが、そこは省くとしての話だ」
「そもそもですよ?私は原子についてもよく分かっていないのですが」
「それで、その原子の動きで人間も、世界も、宇宙すらも現在進行形で未来に、無秩序へと進んでいる。そして、それを僕たちは観測している。それが時間だ。ではここで、前回の火属性魔法で加速。氷属性魔法で減速を何となく理解した訳だが、その減速を使って世界全体を遅くし続けて停止させれば、世界は止まる。つまり、時間停止だ。簡単な話だろ?」
「ちょ、ちょっと待って下さい?えーっと。まず、他人に直接影響を及ぼすのは難しい。って話は前回しましたよね?それを世界中の人や生き物なんかにも掛けるんですか?」
「そうだよ。でも、それだけじゃない。そこらにある空気や大地、海や森。大気圏を超えて太陽系、銀河系。そしてその先。あらゆる物全ての物の動きを止める。これが時間停止魔法だ」
「は、果てしないですね」
「いや、まだこれからだ。そこから時間を巻き戻すには、それら全ての原子。の、さらにその中にある電子や陽子、中性子。からの、陽子や中性子の中。素粒子の動きを読み込み、逆再生。そこで初めて時間の巻き戻しが可能になる。因みに、60キロの人間1人に原子 5.72 × 1027 個は存在しているらしい」
「……もう意味が分かりません」
「ああ、大丈夫だよ。人間は今しか観測出来ないから時間は前にしか進んでいないように感じるけれど。それは観測出来ないだけであって。過去も、そして未来も同時に実在しているって話だから、読み込むことは簡単なはずだ。キャパシティさえあればね」
「全然大丈夫ではありませんけど?というか、それだと未来は決まっている様になりませんか?」
「どうだろうね。詳しくは僕にはわからないよ」
「あれ?でも、時間停止から今度は逆に原子を動かすとなると、今度は火属性魔法で振動させることになるんですか?それとも操作?となると、何魔法ですか?」
「だから、時間魔法だよ。それか、風属性魔法じゃないの?」
「……どうしていつも、最後の方は適当なんですか?」
「いや、だってよく分かってないんだよ。僕自身」
「それを人に教えるってどうなんですか?」
そう言って少女は呆れていた。
「あ、そうそう。この方法を自分だけに試すと体が過去に戻るから永遠の命も可能だよ。脳も一緒に戻すから記憶も一緒に戻って覚えてないけどね」
「脳だけ戻さなければ良いのでは?」
「脳の寿命は120年だよ。ちなみに50年くらいから衰え始める。そして、脳は死んだ細胞が生き返らない」
「……」
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