第4話


「それじゃあ、今回は時間魔法について考えてみようか」


「はい!……え?ちょっと待ってください。まだ水、風、土魔法と太陽についての説明を聞いてませんよ!師匠!」


 少女は、少し声を荒げて言う。


「あー、じゃあ水属性魔法からにします」


「はい。お願いします」


「水属性魔法とは基本的に水を操るものだが、その過程では空気中の原子、水素と酸素を結合させるか、或いは空気中の水分を集めているか。それか魔力を何らかの力で水に変えている」


「なるほど?」


 少女はわかっているようで、わかっていないような。合間に返事をする。


「以上だ」


「え?それだけですか?」


「それだけだ。火属性魔法の可燃物枠が、水に。正確には液体を生成しているだけに過ぎない。因みに風はそれが気体になり、土属性は固体だ。それを君たちは投げ飛ばしたり、少し形を変えている。火属性に比べれば簡単なことをしているな」


「ちょっと待ってください、師匠。風属性は風を操るものなのではないんですか?」


「まぁ、基本的にはそうなのかも知らないが……そうだなぁ。例えば、風を飛ばして遠くのものを切るかまいたち何かがあるだろう。あれって結局、空気を飛ばしているのか?それとも魔力を飛ばしているのか?」


「そ、それは……どうでしょうか?私にはわかりません」


「他にも、竜巻を起こすとして、それは魔力で空気中をコントロールしているのか?それとも魔力が回っているだけなのではないか?」


「それも……わからないですね。少なくとも、魔力を感知出来ますので、魔力的な何かが影響を及ぼしていると思いますが……」


「そうだろう?まぁ、結局は詠唱や魔法陣、イメージの内容次第なんだが、それだと風魔法は何もしてないことになる。ただ魔力を使っているだけだ。だから気体を作る力。それを風魔法と呼ぶ事にした。僕は」


「な、なるほど。では、液体、気体ときて、最後の土属性が、固体を造る魔法だと」


「そう。土属性と言っても、地面の土や砂を魔力で集めて固める。なんて事もするだろう?でも、魔力をそのまま岩にすることだってあるはずだ。だから、僕はこれらの魔法をそういう風に定義した。違いがあるとするならば、コスパかな?無いものを創るより、その場の土とか使ったほうが効率はいいよね」


「……師匠、ちょっと待ってください。火魔法の様にもう少し砕いて考えてみましょう」


「というと?」


「例えばですよ?水魔法は空気中の水蒸気?的な物を集めるもので、その……原子?とやらを収束させる力。風魔法は空気を飛ばす、原子を拡散させる力。土魔法は、集めた土を固める、原子を圧縮する力。なんてのはどうでしょうか?」


「なるほど、良い着眼点だね。でも、それらの現象って火属性を使った温度で変わったりするんだよ」


「詳しくお願いします」


「例として、水の場合、火属性で摩擦、或いは振動を起こす現象を行うと、熱を持って原子が分散。蒸発するんだ。そして、その逆。火属性の摩擦を仮に操作する力で、原子の動きを遅くすると熱が無くなり凍る。筈なんだ」


「え?ちょっと待ってください?火属性魔法で凍るんですか?」


「うーん、そうだね……。火属性魔法を仮に振動を与える力。とした場合は、氷属性の魔法は振動を抑える力。と、なる。かな?でも、そうなると、四元素が五元素になっちゃうから……一緒にしてる、感じかな?てか、ほぼ一緒だよ。うん。原理は同じだ」


「なるほど?つまり、その、原子?とは、振動を増やすと熱を持ち、振動を減らすと冷たくなるんですね?それで、水に火魔法を使うとそれだけで気体、液体、固体の全てに変換が可能。と」


「そうそう。でも、そうなると水はガラス状態になるんじゃないかな〜って」


「なんですか?それは?」


「いや、まず。ガラスって液体なんだよ」


「はい?」


 青年の発言に、少女は頭大丈夫か?コイツ。……とまではいかないが、何を言っているのかわからない。といった表情を浮かべた。


「えーっと。液体と固体には明確な定義があってね。固体は分子が規則正しく並んだ構造で結晶化した物のことを示す言葉なんだよ。でも、ガラスって、熱して溶けた状態から形を決めて固めるでしょ?するとそのまま粘性を保ってゆっくり冷えて固まるから結晶化せずに分子が水と同じで乱れた状態のままになるんだ。だから、分類上液体なんだよ」


「はぁ、そうなんですね」


 どこか腑に落ちない様子で理解を示す少女。しかし。


「ちょ、ちょっと待ってて下さい?今の話によると、水の振動を停止しても固体はガラス状態なんですよね?では、私の考えの否定にはならなく無いですか?」


「うん。一応、水の周りの振動を抑えると、周りが冷えて氷を作ることは出来るけどね」


「しかし、それは水の話で、土はそうも行きませんよね?」


「まあね」


「では、砂や土を圧縮して作るのが土魔法としては正解なのでは?」


「うーん、どうだろう。岩の出来る原理についでだけどね。三つあるらしくて、一つは火成岩。二つ目が堆積岩。三つ目に変成岩があるらしいんだ」


「……続けてください」


「一つ目、火成岩は熱で溶けた物が固まった岩。二つ目の堆積岩は積もった泥や砂、土の重みで出来た岩。三つ目の変成岩は、火成岩や堆積岩が熱や圧力で変化したものを言うらしい。だから、熱でも圧縮でも一応は岩が出来るんだ」


「なるほど。でも、そうなると火成岩っていうのは、溶岩が固まったもの。ってことですよね?するとさっき話してたガラス。つまり液体に入りませんか?」


 少女はドヤ顔をした。


「そうだね。じゃあ、もう君の言ってることが正解でいいよ。正直わかんないし。僕、そんなに頭良くないんだ」


「……なんだか釈然としませんが。では、そういうことで」

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