第2話:晴翔と結愛
晴翔は好きだった女の子と親友のキューピットをして、自身の失恋を感じようとしていた矢先に、なんと、親友の妹から付き合ってと言われたのだった。
しかも、かなり上からの言われようである。
流石に失恋の矢先の話でそんなところでもない晴翔は丁重に断ろうとしていたが………、
「ってか、どうしちゃったのよ? 急に?
ツッコミたいところはいっぱいあるんだけど?」
晴翔はとりあえず結愛に言った。
そう、彼女の名前は勅使河原結愛(てしがわらゆあ)。先ほど陽葵と悠人が付き合った話をしたがその悠人の1つ下の妹である。
彼女とは悠人の家に何度も行っていて、その度にいつも一緒にいたので自然と顔馴染みとなっている存在である。
「いやいやいや、まずは外見の話をしようか?
結愛っては、一言で言ったらめっちゃギャルだったじゃんか? 化粧にピアスにネイルに首元もいっぱいアクセサリーじゃらじゃらしていたしね。あと、かばんにも!
髪なんか何色あるのかわからなくて、もはやレインボーだったじゃん? それにサイドポニーだったでしょ?
色はともかく、サイドポニーなんて学校でも結愛しかいなかったからトレードマーク的にひと目でわかってたのに、しかも、あんな気色の格好でも良く似合って可愛いと思わせるんだからすごいと思ってたよ?
ギャル嫌いのオレでもね。」
「え? うそ? マジ?? じゃあ、サイドポニーはもとに戻すね? 実はあれは私も気に入ってたんだよね!
可愛いのかぁ。そっかー、晴翔がそこまで言うんじゃ仕方がないわねー☆」
「で、しょっちゅう先生に呼ばれてたにも関わらず、それがどうして清純派ヒロインみたいなカッコになってるの?」
「どうしてって、あんたに合わしたに決まってんでしょ? 晴翔的にはこういう感じのが好きなんでしょ? 陽葵さんみたいな?
これから晴翔と付き合うわけだし、好みは相手に合わせないとね! まあ、私は多少地味になっても可愛いことには変わらないっていうか、私の可愛さは地味にしてもあふれ出ちゃうわよね! ハハハ。
あと、言っておくけどピアスはしてないわよ! あれはイヤリング。ピアスはお兄ちゃんが嫌がってたからやってないの! おかげでしょっちゅう失くしてたわよ!」
「いや、ピアスとかイヤリングとはどうでも良くて、なんでオレと付き合うことが前提になっているのかということを聞きたいわけだが………。
まあ、外見の話題を突っ込んでしまったオレかもしれんが………。」
【でもまあ、そうやってオレに合わせてコーデしてくれるのはうれしいところだし、こういうところはしっかりと可愛いところだよな。】
「あ、そうよ! ってか、断るってどういうことよ? 私、これでも結構モテるんだからね! その私が告白しているっていうのに!」
結愛はあくまで上から目線というやつで晴翔に絡んでくるのであった。
【ってか、会話が成立してねぇ………。結愛はいつもこんな感じなんだよな。悠人以外には。しかしまあ、外見も可愛いくて、性格もサッパリしていて、いわゆるオレ様系ってやつ?
学校でも一部抵抗勢力みたいなものもいるが、結愛を好きな勢力のほうが多いのも事実であり、これがまた本人も自覚していてよりやっかいなことになっているのである。】
「なんで断るって、そりゃあ、この状況下では断る選択肢しか無いでしょ? 俺はちょうど失恋したばっかりじゃん? 結愛もオレが陽葵のこと好きなの知ってるよね? 正直陽葵のこと吹っ切れるわけないじゃん。
それに結愛だってなんなんよ? 告白!付き合う!とか言ってるけど、別にオレのことを好きってわけじゃないよね? どういうことなんよ!?」
「くっ、そ。それは………。」
「なんだよ! めちゃ図星じゃないかよ!
さらに言うと、結愛ってばお兄ちゃん子で悠人にべったりだったじゃん。どっちかって言うと、オレが悠人の家に遊びに行くようになって、オレのことを嫌ってんじゃないかと思ってた。」
「そ、そうよ! 確かに私はお兄ちゃん大好きっ子のスーパーブラコンよ!
最初の頃はあんたのことは嫌いだったよ! 一度ならず、何度も家に来るようになって私とお兄ちゃんの時間が減ったし邪魔されたんだからね! ほんとムカついていたわ!
で、私も思いっきり嫌がらせもやったつもりでいたわよ!!
でも、晴翔ってば私の嫌がらせにへこたれることもなかったし、なによりよ! あのお兄ちゃんの信頼を勝ち取って親友してたんだからそっちのほうが驚きよ!!!
そういう意味で言うと、一目置くっていうの? そういう感じにはなっているのよ!」
「ちょっ! あの数々の行動はやっぱり意図的な嫌がらせだったのかよ! それに時間が減ったって言うけど、結局、いつも悠人のゲーム部屋にべったりいたじゃん!
オレとも一緒にゲームしたじゃんか! まあ、だからこうやって顔なじみになったんだと思うけどね。
うん、だからと言って付き合うというのは一足飛びだと思うし短絡的というか………。」
「あなた、妙におじいちゃんみたいなところあるわよね。まあ、そこはどうでも良いけど………。
まあ、確かに今の時点で晴翔のことが本当に好きかって言われたら、『わからない』が正直なところよね。これは認めるわ。
でもね、お兄ちゃんが陽葵さんと付き合うってことになったので、私としてもお兄ちゃん離れをしないといけないわけよ。
ってか、あれだわ! お兄ちゃんが陽葵さんと付き合うことになったのもあなたが原因じゃない!! これは責任もあるわね。
それに晴翔も陽葵さん離れをしないといけないわけでしょ? それに私がなってあげるって言ってんのよ!
なので、晴翔の選択肢は私と付き合うってことしかないわけ! わかった?」
「な、なるほど。結愛のくせに理屈っぽいところを語るではないか! 言いたいところの論理的なところはわかったし、間違いも無いと思う。
だからって言って、こういうのは理屈だけじゃないだろ? 感情のところもあるだろうに? オレのことを好きでも無いのに付き合って大丈夫なの? オレも大丈夫かって言われたら大丈夫じゃない! って答えるしかないわけで………。」
「ああ、もう、煮え切らないわね。ゲームのことや論理的なことはスパって話してくるのに、こういうところはうだうだとするタイプだったのね。
これ、さっきも言ったけど、確かに今は好きじゃないかもしれないけど、将来的にもずっとそうかって言ったらわかんないじゃない?
私としては、あのお兄ちゃんが親友として付き合ってきた人なのよ? だから、今時点でもとても興味があるし、もっとあなたのことを知りたいっていうのもあるの。その中で好きになっていく可能性もあるって思うのよね。お試しで付き合ってみるっていうのはダメかしらね?
あ、付き合ったからって、いきなりチューしたり、エッチなことまでしようって思っているわけじゃないでしょ? あれ? ま、まさかそういう人だったりしたの???」
「ちょー! 人聞きの悪いこと言うな!!!」
「でしょ? だったらいいじゃない! 流石に陽葵さんのことを忘れさせてあげるわ!ってところまでは傲慢だと思うけど、私だって、結構可愛くてモテるし、晴翔だって案外すぐに私を好きになっちゃうと思うわよ?
あと、もうひとつ私個人的な理由もあってね、結構告白されたりするんだけど、いい加減うざったいのがあったのよね。
で、付き合うにしても晴翔だったら、外見内面、両方ともスペック高くて申し分ないわけよ! これでようやく変な虫が湧かなくて済むわね。」
「ちょっ、何気に最後のほうはひどいことが混じっているような感じがしたが………。
でも、そこまで言われたら、確かに断る理由が見当たらないな。陽葵との失恋でいきなり付き合うのかよ!
って言われることもあるかもだが、相手が結愛ならその点はうやむやになるのかもしれんし、結愛と付き合うことによりちょっとは気が紛れるのかもしれないしね。
よし、わかった! それじゃあ、付き合ってみようか?」
「そそそ、ようやくわかってくれた?
言っとくけど、私から告白なんて初めてなのよ! 断るなんて選択肢はそもそも無いんだからね!!!」
この聖バレンタインデーの2月14日に2組のカップルが誕生したのであった。
これは学校中に衝撃を与える出来事になってしまう。
なんぜ、2年生の陽キャグループの代表格である晴翔と陽葵が付き合うことになったからである。
このふたりが付き合うことになっていればなんと幸福だったかはわからないが、陽葵は悠人と、晴翔に至っては、1年生の結愛とである。
もちろんのこと1年生にも衝撃が走ることになる。ギャルで問題児だった結愛が晴翔と付き合うことになったのだからだ。
この2組のカップル成立は、学校内でもまったく微塵も1ミリだって想定外で、周りは不穏な空気が発生することになる。
しかし、先生方は喜んでいた。なんせ、結愛がギャルで無くなり、外見上の校則違反が無くなったからである。※内面的にはまだ少し残っているが………。
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