(19)超豪華高層ホテルの貴賓室

定宿となる貴賓室に入ると、松本華奈は、広いクローゼットの中身を立花隼人に見せた。

(政府は、事前に立花隼人の着替えも準備していた)


「あくまでも、とりあえずに過ぎませんが」

「聖トマス学園の制服を夏服及び冬服、それぞれ二着」

「豪華なホテルですので、礼装用のスーツを二着」

「普通のスーツも、厚手のもの、薄いもの、それぞれ二着」

「若い男の子ですので、普段着はカジュアルのものを」

「ツイードのジャケット、セーター、パンツを三着

「デニムジャケット、パンツ、シャツも黒と淡いブルーのもの」

「パジャマは、当ホテルの所定のもの」

「靴は革靴とスニーカーを二足ずつ」

「下着も、準備してございます」

「他にもご希望があれば、お申し付けください」

(立花隼人は興味ぶかそうに、見ている)


少し、間を置いた。

「それから、今着ている制服は、クリーニングに出しますので、お着替え願います」


立花隼人の目がクルクルと動いた。

手に取ったのは、濃紺のツイードジャケットの上下と白いセーター、黒の革靴。

(この時点では、松本華奈は、ほお・・・と興味深く見ていた)


「ここで着替えればいいのか?」

立花隼人は、松本華奈に聞いた。


「え・・・あ・・・はい」

(超高性能ロボットの着替えだよね、と思うけれど、何故か落ち着かない)

(目は、立花隼人の「生着替え」に吸い寄せられた)


立花隼人は、スルスルと脱ぎ始めた。

(しかも、きれいに、たたんでいる)

(たたみ方も、インストールされているのか、実に美しい)

(普段は、粗雑な松本華奈は、自らを恥じた)


立花隼人は、ついに下着一枚になった。

(松本華奈は、白く美しい太もも、すねから目が離せない)

(汗はかかないのだから、下着は脱がないと思っていた)


ところが、そうではなかった。

立花隼人は、下着を全て脱ぎ、全裸になってしまった。


「キャッ!」

松本華奈は、顏を真っ赤に、声まであげてしまった。

(視線は、そらさなかった)(見たかったらしい)


実に見事な裸身だった。

とても「ロボット」とは思えない。

ギリシャ彫刻のような、極上の美少年マネキン、しかも局部まで、美しさを感じた。

(いやらしさは、全く感じない)


松本華奈は、ドキドキして、顏を赤くしたまま、立花隼人に近づいた。

「着替え手伝いましょうか?」

(実は、あちこち、触りたかった)(恥ずかしいけれど、局部も含めて)


立花隼人は、表情を変えない。

逆に聞いて来た。

「ロボットの裸で、何故興奮する?」

「君の心拍数も増加しているよ」


松本華奈は、悔しかった。

(この小生意気なロボットに、完全にマウントを取られていると思った)

「だって、どう見ても、人間の男の子にしか見えません」

「私だって若い女の子です」(オバサンと言われたことを、根に持っていた)

「・・・見れば・・・反応します」(ほぼ、逆ギレである)


逆ギレついでに、「逆質問」を繰り出した。

「ロボットでも、局部を触ると、変形するんですか?」

「警護役として、秘書として、確認したいのですが」

(かなりアブナイ質問であるとは自覚したが、興奮のあまり、止まらなかった)


ロボット立花隼人は、全裸姿で立ち尽くしている。

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