(18)官邸、そして立花隼人はホテル住まいになる

立花隼人と警護役の松本華奈は、首相官邸に戻った。

官房長官と国家公安委員長が出迎え、そのまま首相執務室に入った。


首相は、恐れるような(肝をつぶしたような)表情。

「学園内はともかく、首都高での動きは、危険極まります」

「今後は、日本政府をもう少し頼ってはいただけないか」


立花隼人は表情を変えない。

「全て安全な距離を計算の上で、動いている」

「それは、開発者立花昇一により、最重要として設定されたプログラムに基づいている」

「その立花昇一を、愚かにも暗殺した日本政府に言われる筋ではない」

(首相、官房長官、国家公安委員長は、その顔をひきつらせた)


官房長官からは、感謝の言葉。

「安西議員は、福島原発の処理水放出反対デモの、野党の責任者です」

「反対デモが円滑に進まないので、テロを実行して、政府に警告を与える意図があったと、自供しました」

「花山は、実行部隊の一人でした」

「ポルシェに積まれた危険な物は、その資材」

「原発の危機をお救いいただき、感謝しております」


立花隼人は、表情を変えない。

「日本政府のテロ対応は、生ぬる過ぎる」

「社会を安全に保つという、政府の責任の自覚に欠けているのでは?」

「ほとんど毎日顔を合わせる危険な野党、議員を全て野放しではないか」

「事件や被害が発生してからでは、取り返しのつかないことになる」

(この指摘も厳しく、首相、官房長官、国家公安委員長は、顏を下に向けた)


国家公安委員長が、立花隼人に懇願した。

「松本華奈を手足として、お使いになってください」

「今までの御活動、感謝しておりますが、我々の至らなさも多々ありますが」

「万が一の事故を恐れての措置です、ご理解いただきたい」

(松本華奈も、頭を下げた)


立花隼人は、やや表情を柔らかくした。

「全て、安全な距離を計算の上で、動いていると、言ったはずだ」

「心配は無用だ」

「ただ、手元に欲しくなる物も出て来る」

「松本さんには、秘書的な機能で、対応してもらいたい」

(首相、官房長官、国家公安委員長、松本華奈は深く頭を下げた)


首相官邸を出て、立花隼人と松本華奈は、至近の豪華な高層ホテルに入った。

ロビーを歩きながら松本華奈は、立花隼人の手を握った。

「このホテルの貴賓室を住居としていただきます」


立花隼人は軽く頷いたが、握られた手が気になる様子。

「何故、手を握る?」

「ロボットと手をつなぎたいのか?」


松本華奈の顏が赤くなった。

「手を握りたかっただけです」

「触感は、可愛い人間の男の子ですよ」


立花隼人は、怪訝な顏。

「ロボットが可愛いとは、公安の程度もタカが知れる」


松本華奈は、まだ顏が赤い。

「部屋に入って、いろいろとお話させていただきます」


立花隼人は、聞き返した。

「いろいろとは何か?」

「そもそも、何で顏を赤くする?」

「それが人間の恋と言われる妄想感情か?」

「仮に立花隼人が人間としても、君は24歳、私の15歳と、年齢はかなり離れている」

「オバサンと子供ではないか」


松本華奈は、口が「への字」になった。

カッとなって言い返した。

「はいはい!どうせオバサンです!」

「どうしてオバサンを苛めるんですか?」

立花隼人は、松本華奈の手をやさしく握り返した。(途端に松本華奈が蕩けた顏になった)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る