(11)小柄な立花隼人VS相撲部②

「何だと?てめえ!」

騒ぎ放題、散らかし放題の相撲部の中から、一人が立ちあがり、立花隼人に、いきなりの張り手を見舞おうとした。

(見守る生徒たちは、全員、顏を下に向けた)

(張り手を繰り出した相撲部員は、身長は185㎝を越え体重100㌔を超える巨漢、対して立花隼人は身長170㎝、体重は60㌔以下)


次の瞬間だった。


「うわ!」


巨漢相撲部員の大声が学食に響いた。


「おい!離せ!」

の怯えたような悲鳴も聞こえて来る。


下を向いていた生徒たちは、ようやく視線を巨漢相撲部員と立花隼人に向けた。

そして、驚いた。


立花隼人の手が、巨漢相撲部の手首を掴んでいる。

その巨漢相撲部員は、全身を硬直させ、立花隼人の手を起点に、「片手倒立」のように、宙に浮いているのである。


立花隼人は、涼しい顔。

「先に暴力を振るったのは、あなたです」

「それを謝るべきでは?」

「早くしないと、手首折れますよ」

「前後左右、どこに動いても、折れます」

「それと、あの女生徒さんに、心より謝罪してください」

「まだまだ、あるかな」

「迷惑かけ通しの、この学食のスタッフにも、心より謝罪してください」


あまりの痛みと恐怖に耐え切れなかった巨漢相撲部員が、反応した。

「悪かった、何でもする!」

「謝る!」

(立花隼人は、ゆっくりと、巨漢相撲部員を降ろした)


しかし、降ろされた巨漢相撲部員と、他の相撲部員は、途端に態度を変えた。

全員で、立花隼人を取り囲んだのである。

「よくもやりやがったな!」

「相撲部に暴行を働いたんだ、お前が謝れ!」

「PTA会長と学園長に言って、退学させるぞ!」

「その前に、しばきあげてやる!」


遠目に見ていた生徒たちは、震えあがった。

「あれが、相撲部の怖さ」

「絶対に自分の非を認めない」

「何があっても、暴力第一主義」

「さっきの片手倒立は、よくわからないけど、今度こそ、立花君危ない」


騒ぎを聞きつけたのか、相撲部監督花田権治、担任森美智子、遅れて学園長吉田健治も学食に入って来た。

まず、相撲部監督花田権治が、野太い声を相撲部全員にかけた。

「おい!お前ら!今日のところは、勘弁してやれ!」

「その立花ってのは、まだ、この学園のシキタリを知らねえんだ」

「担任と学園長が、頭を下げて来たから、許してやれ」


(事情を知っている生徒からは、「マジ?」「横暴な相撲部は変わらない」「学園長軟弱」「担任の意味ある?」等、文句が聞こえて来る)

相撲部に囲まれていた立花隼人が、声をあげた。

「相撲部が許そうと、僕は許しません」

「すでに、僕が学食に入ってからの全ての動画を官邸と文科省、学生相撲連盟に送りました」

「それから、警察とマスコミにも」

(ロボット立花隼人には、パスワード解析機能、内部情報収集システムと外部通信システムも、システムとして組み込まれていた)(過去の武蔵野学園の問題動画、不祥事隠蔽ファイルも収集していた)


相撲部監督花田権治が「はぁ?」と首を傾げた時だった。

まず、警視庁本庁から、数人の警察官が入って来て、相撲部員全員(相撲部監督花田権治を含む)を捕縛した。

担任森美智子と学園長吉田健治は、そのまま、文科省への出頭を求められ、厳しい事情聴取を受けることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る