(10)小柄な立花隼人VS相撲部

クラス委員長伊藤恵美の案内で、立花隼人は、(一年A組のクラスメイトも、不安を感じ同行した)、学食に入った。


伊藤恵美の情報通りに、相撲部の巨漢数人が、大騒ぎになっていた。


「おい!おばちゃん、飯の量が少ねえって!」

「もうボケたの?耳が遠いの?」

「何、この不味いラーメン、味が無い」

「醤油ケチってんじゃねえよ!」

「唐揚げ、至急50個追加!」

「それと肉まんも50個追加!」

「品切れ?知らねえよ!」

「走って仕入れて来い!」

「相撲部に逆らえるの?」

「クビにするぞ」

(相撲部のテーブルや、付近の床は、食べ散らかしで、カオス状態になっている)

(ブタ小屋でも、これほど汚らしくはない)


相撲部の大騒ぎは、ますます激化した。

少し離れたところに座る、他の生徒にオドシをかけたのである。

「おい!そのナポリタンを持って来い!」

「まだ口をつけてないだろ?」

「いいから、よこせ!そこの貧弱女!」

「よこさないと、窓から投げ捨てるぞ!」

(そのオドシで、食堂にいる相撲部全員が、大声でゲラゲラ笑う)


立花隼人は、伊藤恵美にそっと聞いた。

「この実態を、学園長は知っていますか?」


伊藤恵美は、力なく首を横に振った。

「知ってはいると思うよ」

「でも、相撲部は全国大会の常連、主将の親が都議でPTA会長」

「怖がって、見て見ぬふり」

「彼らは、飲み食いした料金も、払わない」


「ナポリタンを持って来い」と強要された女子生徒が、恐る恐る、ナポリタンを持って歩き始めようとした時だった。

立花隼人が、あっという間に、その女子生徒の隣に立った。

(走るわけでもなく、その瞬間には、隣に立っていた)

(このロボットは、瞬間移動もできるらしい)


立花隼人は、その女子生徒(二年生らしい)に自己紹介。

「立花隼人と申します、怖がっているようなので、私が代わりに持って行きます」


「え?」と立花隼人を見つめる女子生徒に、

「ところで、このナポリタンの値段は?」


女子生徒は、首を横に振った。

「500円だけど・・・でも、無理よ」

「そんなこと要求したら、何されるかわからないもの」


立花隼人は、あっという間の女生徒の手にあったナポリタンを持ち、大騒ぎの相撲部たちの前に立った。

「彼女、怖がっていたので、代わりにお持ちしました」

「本日、編入してまいりました、立花隼人と申します」

「このテーブルに置く前に、代金500円をいただきたい」


相撲部は、ゲラゲラと笑った。

「誰だ?お前?知らねえよ!」

「女みたいな顏しやがって、このチビ!」

「500円だと?ふざけんじゃねえよ!」

「いつもな、金の代わりに、尻と胸を揉んでさし上げてるよ」

「なあ、天下の相撲部に、スキンシップしていただける、名誉じゃねえか」

「オラオラ、モタモタしてねえで、テーブルに置けよ、このガキ!」


立花隼人は、冷ややかな顏のままだ。

「仮に500円払わないのなら、このナポリタンは彼女に戻します」

「それと、この学食での、行状については、学園理事会に報告します」

「それだけでは済みませんよ、学生相撲連盟にも、動画を送ります」


最後の「学生相撲連盟」で、相撲部全員の表情が変わった。

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