(4)クラスで簡単な自己紹介、クラス委員長伊藤恵美

立花隼人は、一年A組に入った。

クラスメイトたちは、(入って来る前からざわついていたが)一斉にザワザワとなった。


「うわ・・・可愛い!」

「AI美少年人形?」

「・・・スタンフォード付属の首席・・・やば過ぎ・・・」

「ねえ、校門で斎藤監督をコテンパンにしたの、面白かった」

「うん、私も見ていた、かっこよかった」

「いいなあ・・・可愛くて強い」

「なんか、見ているとムラムラしてくる」

(一部、危険なヒソヒソ声はあったが、担任の森美智子が教壇にのぼると、さすがモラル高い進学校、ピタリと静まった)


担任森美智子

「本日より、後期授業を始めます」

「学園長の訓示を、よく考えて、有意義に勉学に励まれることを期待いたします」


クラス全員の「ハイ!」と揃った返事を満足気に聞き、担任森美智子は、立花隼人を教壇(自分の隣)に立たせた。

「始業式で紹介された、立花隼人君です」

「今日から、一年A組のクラスメイトとなります」


立花隼人も、自己紹介。

「あらためまして、立花隼人です」

「この学園には不慣れですので、よろしくご教示をお願いいたします」

(少し、はにかむような笑顔)

(その笑顔が女生徒、男子生徒問わず、大半の生徒の心に響いた)

(ただし、クラス委員長伊藤恵美だけが、冷めた目で、立花隼人を見ている)


担任森美智子は、そのクラス委員長伊藤恵美に声をかけた。

「伊藤さんの隣に、立花君に座ってもらいます」

「伊藤さん、立花君が学園に慣れるまで、アシストをお願いします」


(伊藤恵美は、面倒そうに「チッ!」と小さく舌打ち)

(しかし、拒絶は内申点などの自らの評価減に直結すると理解している)


伊藤恵美は、椅子から立ち上がった。

「立花君、ここの席になります」と、立花隼人を座る席に手招き。

立花隼人は、クラス内を神妙に歩き、「ありがとうございます」と、静かに席に着いた。


ホームルームが終わり、担任森美智子はクラスから出て行った。

一限目は「英語」(授業開始まで、約10分)


立花隼人が鞄から、英語のテキストとノートを取り出していると、伊藤恵美が(やや皮肉気味)に、声をかけた。

「スタンフォード首席なのに、英語の授業を受けるの?」

(その皮肉を聞いていた、クラス生徒全員が嫌そうな顔)

(伊藤恵美は、その学力の高さから、クラス委員長に指名されていた)

(しかし、プライドが高く、他人の面倒より、自分を優先するタイプ)

(したがって、立花隼人のアシストなど、本音でしたくない)


立花隼人は、クラス全体を見回して答えた。

「僕が、この学園のカリキュラムに沿って、授業を受ける」

「それの、どこに問題が?」

(厳しい言い方だった)


立花隼人は続けた。

「そもそも、僕が英語の授業を受けるのに際して、伊藤恵美様に何の不都合があるのですか?」

「それとも、僕のアシストなど、実はしたくなくて、隣にも座って欲しくないのが、本音なのでは?」

「今は、担任の森先生が教室にいない、だから伊藤様を評価する人がいない」

「多少皮肉や、言葉責めをしても、成績には響かないと判断した」

「そうでなければ、クラス委員長が、そんな不用意な発言をするわけがない」

(伊藤恵美は、「図星」なので、全く反論できない)


立花隼人は、伊藤恵美に冷ややかに、言い切った。

「もし、反論できなければ、クラス担任の森先生と、学園長に報告して対応してもらいます」


普段は、「氷の女」の評判を持つ、伊藤恵美の顏が、一気に真っ赤になった。

(クラス全員の自分を責めるような顔も、実に痛い)

(伊藤恵美は、強い敗北感、涙も出て来た)


立花隼人は、泣き顔の伊藤恵美に、(相当上質な)白いハンカチを渡した。

「カリキュラムに従っていただければ、報告はしません」


伊藤恵美は、立花隼人(愛らしい顏に一変している)の顏をじっと見た。

「ごめんなさい、変なこと言って」

「何でも聞いてね、どんな時でもいいよ」


(実は、立花隼人に、ドキドキ感が止まらない)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る