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 戦いは既に始まっていた。『6d<シックス・デイ>』への参加を提案されたその時点で、俺はチームにおける主導権イニシアチブを握ろうとしていた。そして、その試みは成功した。早まった一般化チェリーピッキングと様々な文章叙述レトリックの駆使によって俺はGH11443のプロゲーミングチーム『Samaritanサマリア人』の臨時リーダーとなることができた。これは無論、今度の『6d<シックス・デイ>』参加にあたる全権委任と、その裏返しである無限責任とその所在とを明らかにするものであるが――何であれ、臆していても仕方がない。

 チーム『Samaritan』われわれはマルチプレイヤーの集団だ。何でもそこそこできる。けれど目を見張るほどの何かが出来るわけではない。……しかし、俺を含む面々には自分たちがそういう人間であるという自覚と自負がある。これは考えようによっては使いやすい。何かしらの策を弄さねば勝利できないということが理解出来ているのだから、自分たちは策に従わなければならない……と、こう考えるはずなのだ。

 表向きには反発の意志を示すやもしれないが、内実としては策に従順である必然性があるということを理解している。この前提からチーム構造を逆算していけば良い。

 もし仮に、今大会において俺に反発する人間がいるのであれば、パターンは概ね二つに分類することが可能になる。

 一つ。俺の作戦では勝利ができないと思う時、不服従が生じる。これは分かりやすい話だ。合理性や忍耐というものは、先に何らかの結実が約束されている時にだけ機能する方法メソッドであり、行為アクションだ。

 二つ。俺が展開しようとする作戦の前提となる修練トレーニングの過程において、その作業に確信を抱けず反発する。この状況は一つ目と似ているようで内実は異なる。一つ目の状況はあくまで勝利を共通の目的とした上で発せられるものであるが、二つ目はより単純で、ようは今目の前にある作業の苦しさに耐えかねて、勝利の価値……それが内包される今度の大会それ自体に疑問が浮かんだ瞬間の、ようは弱音である。ただ、臆面もなく弱音を吐くということは出来かねるので、自分自身が聡いという立場を取るために、そういうことを言うのである。

 こうした事前の想定も、結局のところは勝利のための方策に過ぎない。実際に俺が検討し、実施した方法を公開する前に、俺は今大会における大戦略について書き残さねばならないと思う。

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