phenomenon:10

 少なく見積もっても二時間。……もっとも俺達の体内時計は狂っバグているので、もっと長い時間か、或いは短い時間だったかもしれない。何であれ、結構長い時間を費やして奴を説得しようと我々は試みた。しかし、Lazarus16ヤツにはやはり一つ腹案があったようだった。

 Lazarus16コイツは言った。

<この大会なんかどうですか>

 その前後には、GH11443のお歴々我々による修辞技法レトリカもクソもない説得文が連なる。――つまるところ、Lazarus16ルーキーは話の流れを思い切りぶった切った上で提案をしたワケだ。

 奴が参加を提案したプロゲーミング大会は、『6d<シックス・デイ>』という意味ありげな名前がついたものだった。中身を見てみる……イベント会場はオンライン。そう、つまりイベント会場に人が出っ張っていく形式ではない。この時点で珍しい。ではプレーヤーをどのように選別するのか? この基準も明白だ。対象ゲームで一定期間ランクマッチ上位に食い込んでさえいれば良く、それもタイトルによって変動する。母体となる団体の正体は不明だが、BRICS第三同盟のフレームワークにやたらとこだわりがあるようで、その点においても我々にとって好都合だった。ここでは、プロゲーミングの世界で一つの潮流を占める西側の日本やアメリカや韓国のチームがアウェーで、我々にとってはホームであると言うのは都合が良い。

<どこでこれを見つけた?>

 俺の問いかけに対し、Lazarus16ラザロはごまかすような言い方をする。

<前から目をつけていたんです>

 前から、ときた。それはどれほど前からか。ここに来る以前から、こいつはそういう思案をしていたのか? そういう疑問を横に置き、俺は一つ、GH11443のお歴々お偉方に対し提案を行った。

<この大会、参加するのも悪くないんじゃねえかな>

 という話。すると連中は、俺の提案を境目に発言をまるっきり正反対のものとし、賛同の意見を出し始めた。

<何なんですか、これは>

 とLazarus16新入りは言う。この反応は予想外だったらしい。

 しかし……世の中そんなもんだ。恐らく、GH11443のお歴々お偉方にもプロゲーミングの舞台に対する思い残しみてえなモンがあって、言ってしまえばこのLazarus16新入りの提案にも引っかかるところがあった。それでも、一つの場所に居座る重鎮というのはどのような空間にあっても基本をもって保守的コンサバティブで――当然だ、その場でもっとも多くの利益を受け取る者の一人なのだから――それ故に反発に近い、説得の文言をLazarus16新人は受け取ることとなった。潮目が変わるのは、そのお歴々に対して一定の発言力を持つ俺の賛同あってのこと。

<それじゃあ、考えなきゃならんなあ>

 と、これまた俺は先刻前までのLazarus16ヤツのように話の流れをぶった切り、こう宣言したわけだ。

<俺達に必要なのは戦略ストラテジー。ただそれだけだ>

 と。

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