phenomenon:1-4

 Lazarus16ラザロの言うことに嘘はなかった。こいつは確かに、俺達が新入りに求めるであろう作業の大半をこなすことができた。コンピュータを組むこともできるし、RMTの手順も一通り分かる。何より、虚無に耐えるという人間に求められる最大の苦行ブルシット・ジョブへの耐性が強くあった。俺達は幾つかの作業を伝達した上で、それが無駄骨になるという過程を経験させた。一度、二度、三度……すると四回目の前兆を掴んだLazarus16新入りはこう言ってのけた。

「試験ですよね。もう十分では?」

 全くその通りだったので、俺達は寧ろLazarus16スーパールーキーの言葉に従わされることになる。生意気だとは思ったが、正論に対してどんな理屈ロジックを捏ねたところでそれは屁理屈クソにしかならない。しかし、こうした卓越した技術の披露、というより一連の発露ショーは、既存メンバーとの軋轢をも生み出す。ぶっちゃけ、どんな場所にでも無能はいて、人間は能力で位を決めたがる生き物だが、それで自分が劣位に置かれるのは気に食わない、とまあそういうものなのだ。であるからして、下の方から数えたほうがいいような奴が、このLazarus16スーパールーキーを危険視するのも分からぬ話ではない。俺達の家GH11443にしてみたって、人員が豊富なわけではないから、追放者が現れることはないわけはないのだが、当事者にとってはそういう話にはならない。――兎にも角にも、このLazarus16ラザロという奴のデビューはそれほどまでに鮮烈だったと言うわけだ。

 俺達がやっているゲームの幾つかをこいつが試しにプレイさせられる場面も早期に出てくる。ボロを出して欲しい俺達の家の尻尾の方の連中と、やる気があるLazarus16生意気な新入りの共同作業によってそれは成立するわけだが、劣後にいる連中はやはり頭が足りない。少しずつやっていけば派閥が出来、どっかで敵の一つでも出来るやもしれんのに、もし本当にLazarus16という人物がマジの天才だったら、矢継ぎ早に確認していけばしていくほどに地位はなくなっていく。そういう頭の回し方もできないような連中だからこそ、彼等はそういう位置に置かされるのである。

 案の定、そういう風になっていった。

 こいつは器用な人間だ。大抵の仕事はこなせてしまう。それは遊戯テレビゲームとて例外ではない。mobaやRTSをやらせてみたって、dota allstarsド古典虚無の怪物rtzWarCraft3化石みてえなゲームの伝説的なヒューマン使い、WE.Skyみんなの人気者ほどの腕前ではないにせよ、与えられた職務を無難にこなすだけの実力はあった。FPSは抜群に上手く、時おりチーターじみたズルみたいな動きを人力で展開しやがる。そうやって矢継ぎ早にLazarus16スーパールーキーの実力を確認するもんだから、俺より上の連中はどんどん面白がって遊戯をやらせたがる。この期間においてLazarus16ラザロは俺達の場所のていのいい玩具ナーフの銃だった。

 それでもまだ下位の奴らは、まだこのLazarus16怪物は自分たちが何とか虐げることのできる新入りの立場に押し込められる存在なのだと勘違いをしていたわけだが……こうした彼等の固定観念が決定的に引っ繰り返る出来事が起きたのだ。

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