phenomenon:1-3
<お前、何ができるんだ>
という俺の質問に対し、こいつは
<わりと何でも>
と答える。――やる気があるんだか、ないんだか。
<いいか
俺の長文に対し、あいつはこう答える。
<成る程>
分かってんだか、分かってないんだか……それでも俺は話を続ける他ない。
<……あー。パソコンで金を稼いだことは?>
<色々あります>
回答になってねえんだよ馬鹿野郎。
<あー、はい。そういうことですか。理解しました>
だが、この発言をきっかけに、奴の言動は変化していく。酷く素人臭かったはずの
<何を?>
<ここの環境には制限があるようです>
何を言いたいんだ、こいつは。
<まさかお前、ここがGAFAのオフィスにでも見えたのか?>
<んー>
<例えば、マイニングはスペースの問題がある。コンピュータを並べるようなことはできない。とは言え、株式投資も向いていない。あれは原資が必要だし、そんなセンスがあったら証券会社にでも勤めてトレーダーを目指した方がいい。まあ、マイニングよりは合理的。多分だけれど、ゲームを複数のウインドウで展開してマクロで動作させて、RMTのためのアイテムを稼ぐ。これが分かりやすい。とは言え、これも安定的なぶん、利益率はそうでもない。第一、ハイスペックPCは無から生まれてはこないのだから>
<じゃ、結論はあるのか>
<プロゲーミング! もしくはその結果でトトカルチョを主催する。胴元になるのはマイニングで資産を作るユーザー。払いは仮想通貨>
<成る程>
今度は俺の方がこの言葉を使っていた。
<でもやっぱ一番はゲームで名前を売ってスポンサーを作ることだよね。スポンサーで得た金を、RMT班とマイニング班、後は少しだけ投資に回す。現金を転がせばあら不思議、雪だるまは膨らんでいく>
<勘がいいじゃないか>
<ところで、お宅の洗濯機の調子はどうなんですか?>
<そこまでやったら睨まれんだよ。うちは国境地域の隙間産業だからな。そこまでずっぷしやってんのは紛争地域の連中だけだ。あそこは>
<血濡れの貨幣がたんまりと>
<そういうこった。ブラック・アフリカも北アフリカでも、介入する先進国は皆
<随分と雄弁ですね。次の欧州議会に立候補なされては如何>
<馬鹿にしやがる>
<私はただ優秀な人間が燻っているのが許せないだけのことですよ>
<ところで、私の答案用紙の結果はどうでしたか? 赤点ラインを突破できていればよいのですが>
<残念。実地試験がある>
<面倒な話ですね。とは言え、やりがいもあります>
上等だ。俺はそう口にしていた。
<求めよ、さすれば与えられん。探せよ。そうすれば見出されん。門を叩け、さすれば開かれん>
<新約聖書、マタイの福音書七章七節>
こうして、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます