祖父の葬儀にて

茶ヤマ

腑に落ちぬ事

私が5歳の時に祖父は亡くなった。

命日はこどもの日の5月5日である。

その時に見た事なのだが、当時から腑に落ちない事が3つほどある。


・祖父が危篤という時。

祖父は奥座敷で寝ており、私は水屋みんじゃ(ルビは方言、台所の意)で待機していた。

私よりも幼い3歳になる従妹が「おじいさん、お腹いたいいたいって!」

「おじいさん、体がいたいって!」と逐一報告しに来ていた。

そして慌ててやってきた従妹が叫んだ。

「おじいさん、しんじゃったよ!」


ふと目を開けると、当時私が寝室としてあてがわれていた蔵の中だった。(蔵を母屋と屋根続きにしており、蔵の奥を少し改造し畳3畳分の寝るスペースが作られていた)


起きていくと、「お祖父さんが昨晩、死んじゃったのよ……」と母が涙声で告げたが、私は「うん、知ってる、聞いてた」と答えると、母や祖母は、起きてきたばかりで誰から…と驚いていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇


・さて、その祖父の葬儀の時。

葬儀も自分の家の中で執り行った。

二間ある奥座敷の襖は全て外し、親戚一同が座れるような広さの座敷にされてあった。


そこに飾られている、大きな壺に生けられていた大量の花の中の白菊が、私には髑髏の頭や、肉が削げ落ちて骨と皮ばかりの顔に見えていた。


母に、白い菊が怖い、と言うと首を傾げられたので母には普通の白菊に見えていたらしい。


あれは何だったのか未だにわからない。


◇◇◇◇◇◇◇◇


・火葬も終わり、その日の夜。

真夜中に目が覚めた。

葬儀中は、なぜかいつも寝ている蔵ではなく広くなった奥座敷で寝ることにされていた。


5月なので暑くも寒くもなく、寝苦しいわけではない。

なのに目が覚めた。


何かが気になり、障子をあけ縁側に出て見ると、祖父の昔の職場や親戚などから届いている花輪すべてが内側を向いて設置されているのが、月の明かりと、道路の街灯で見て取れた。

昼に見た時には、外から見えるように置かれていたはずだった。


誰がいつの間に…?


もしかして何か手違いなのかもしれない、と5歳なりに考えて、隣で寝ていた祖母を揺さぶり起こし「外の、あれが…」と指さすが、祖母はちらりと見て「いいから寝なさい」とだけ言った。

私は障子を閉めて、懸命に寝る事に専念した。


早朝、目覚めて障子を開けると花輪は普通に外を向いていた。


本当に、誰が何故あんな事をしたのか、わからない。

見間違いなのかもしれないが。



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祖父の葬儀にて 茶ヤマ @ukifune

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