大陸の主要国家達
獅子の心
中央の大地から少し離れた西の大地
そこにはフランドル国民王国という国家がある
数百年にも及ぶ戦火の中、かつて低地地方に位置していた国家を祖先に持つ国家は、その果敢な戦いぶりと、優れた外交手段によってこの地域を治めるに至った。
父なるライン川を越えて直ぐにゲルマン民族が居るなか、
彼等は独自の文化、独自の価値観を生み出した。
大多数を占める民族をフランドル人と定義し、あくまで其々の民族が一定の権利を持つとし、他国家でありがちな民族問題を緩く収めた。
しかし、あくまでも「王国」の立場を維持し続ける為、王は存在した。
が、その時代ももうすぐにでも終わりに向かい始める勢いである。
ルーシで皇帝が退位し、自由化へ進んだという事は、少なからず国内の反王政運動を活発化させる原因へと繋がった。
現在の国民王国は、一本のみの柱に辛うじて支えられている状況だ。
大陸最強の参謀を作り上げた一人の男、名の通り「槍」の異名を持つ男、アルバート・ファランクス
彼の軍政・内政改革によって国民は国民王国への支持を辛うじて保っている。
アルバート・ファランクスの名は、フランドル国民王国を支える柱の一つとして、戦略と政治の両面でその威信を誇っていた。彼の軍政改革は、無駄な戦争を避けるだけでなく、民間の信頼を勝ち取るために力を尽くしてきた。かつてのフランドルの輝かしい軍事力を取り戻すため、彼は徹底的に訓練と戦術の見直しを行い、また、国の予算を効率的に運用して、民間の支援を得る手立てを講じた。
だが、国内には根強い反王政の動きが広がっていた。王政を維持するためには、ある程度の象徴的な存在が必要だが、その王の権威はすでに大きく揺らいでいる。ルーシの皇帝退位と連邦制への移行が、その波紋をフランドルにも広げていた。政治の風向きが変わりつつある中で、民衆の不満や変革を求める声が高まっていた。国の安定を保つためには、軍事力と経済力を駆使した迅速な対応が必要だ。
フランドル王国の首都におけるある晩、アルバート・ファランクスは王国の運命をかけた重要な会議に臨んでいた。高い天井に飾られた肖像画の前に並ぶ貴族たちの顔は険しく、会議の場の空気は重く張り詰めていた。王国の今後を決める運命の日が、まさにここにある。
「貴族たちよ、我々が直面している問題を、今こそ解決しなければならない」と、アルバートは低い声で言った。「王政の存続が危ぶまれる中、最も重要なのは、民衆の信頼を失わず、政治的な混乱を避けることだ。しかし、我々の現状は決して楽観できるものではない。」
会議室の中では、フランドル王国の進むべき道に対する意見が飛び交った。保守派の貴族たちは、何とかして現王の権力を守り抜こうとする一方で、改革を求める進歩的な声も少なくなかった。アルバート自身は、その中立的な立場を保ちながらも、常に冷静で理知的な意見を述べ続けていた。
「今、王政が倒れれば、フランドルは確実に崩壊するだろう」と、ある貴族が声を上げた。「我々は歴史の重みを背負っている。王国を守るためには、王の権威を維持しなければならない。」
だが、アルバートは少し黙った後、冷徹な表情で言い返した。
「王政を守ることがフランドルの未来につながるとは限らない。王はもう民衆から信頼を失っている。もし、王政の存続が国を危うくするのであれば、我々はその時こそ、王政を終わらせる覚悟を持つべきだ。」
彼の言葉は、会議室に静かな波紋を広げた。その言葉は決して軽くはない。だが、アルバートはその言葉を言い放つことで、フランドル王国の未来を決定づける選択肢を示したのだ。彼自身は、その後の展開を予測し、無駄な時間を浪費せず、即決で動くべきだと信じていた。
「最も重要なのは、民衆の支持を取り戻すことだ。そのためには、単に王政を守るだけでは不十分だ」とアルバートは続けた。「今後の戦略として、民間の改革を進め、全ての国民が平等に参加できる社会に向かうべきだ。具体的には、地方自治の強化と、国民の教育の充実、そして経済的な安定を図る政策を打ち出す。」
会議室の貴族たちは静かに耳を傾けた。中にはアルバートの提案に不安を抱く者もいたが、彼の実績に対する信頼感もあり、結局はその方向性を認める者が多かった。
その後、数週間にわたる議論の結果、フランドル王国は改革への第一歩を踏み出すこととなった。王政はそのまま維持されるが、アルバートの提案した一連の改革案が可決された。その改革が実行に移されることによって、国民の意識に変化をもたらし、民衆の支持を確保するための時間を稼ぐことができた。
だが、アルバートはその間にも心の中で覚悟を決めていた。王政の存続が国の未来を保証するとは限らない。もし、状況がさらに悪化し、民衆の信頼を取り戻すことができなければ、フランドル王国は再び大きな試練を迎えることになるだろう。
そして、時が経つにつれて、アルバートは一つの確信を抱くこととなる。それは、「王政が崩壊するその時、フランドルに本当に必要なのは何か」という、彼自身の選択を迫られる瞬間が訪れることを意味していた。
もしも再びこの大陸が戦火に包まれれば、この国は脆くも崩れ落ちるかもしれない.............
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