第19話

 体一つ分の大きな葉を何重にも重ねた寝所、寝心地は悪いけど、まぁこれに関してはネオ君と一緒にいた七日間もそうやって寝てたし、慣れたものね。

 横向きに寝ながら側で寝ているリリちゃんのお腹をさすってあげる。


 「ごめんねリリちゃん、こんなことになっちゃって」

 「ううん、お兄ちゃんがきっと助けに来てくれるから平気」


 リリちゃん…そうね、きっと来てくれる、初めて会った船の時だって、一人で魔物に立ち向かってくれたネオ君だもの、そんな簡単に諦めちゃう様な子じゃないよね。


 「お姉ちゃんも!」

 「…ありがと」


 リリちゃんの言葉に軽く返し、二人で目を閉じた、どちらが先に眠ったかはわからないけど、お互い落ち着いてゆっくり眠れた気がする。



***



 翌朝、先に私の方が早く目覚めたっぽい、木の根元の穴を隠し、早速川へ行って昨日のように水汲みと魚獲りを始めた、早朝だからやっぱり水は冷たい、気温も相当低い、魚もなかなか見つからないなぁ、どうしよう。


 「どこにいるかなー」


 腰を前に曲げ手を川に突っ込んで探してみるが、結局何も見つからなかった、仕方ないので水だけ持って帰ることにした。


 帰ってみると何か違和感を感じた、さっき私が根元にかけた巨大な葉が分かりやすくずれている、しかし気になったものの風でずれただけだろうと、浅はかな考えをしてしまった私はそのまま小走りでリリちゃんの元へ近づこうとした、その時だった。


 草の中から二本の手が私の両手を掴み捕まってしまう、すると木の根元の中からもう一人、太った男がリリちゃんを担いで出て来た。


 「手こずらせやがって」

 「お姉ちゃーん!」


 そいつらは説明するまでもなく昨日の男達だった、こんなに早く見つかるなんて。


 「えっへっへ〜、もう逃がさないよ〜」


 私を捕まえた男が耳元で囁いてくる。

 ふざけないで、もう捕まるわけにはいかない!


 「うああ!、アッチ!」


 不意のレスファイアで男に手を離させ、その瞬間に目の前へ駆け出し、太った男の足を引っ掛け地面に倒しリリちゃんを連れ逃走。


 「くっそ、何やってる!早く捕まえに行くぞ!」

 「あ、あぁ」


 走らなきゃ、とにかく走らなきゃ!

 道無き道を走りながら、後ろにいる手を繋いだリリちゃんを見て様子を伺う。


 「リリちゃん、起きたばかりでごめんね、このまま走れる?」

 「うん!」


 多分すぐにまた追いかけてくる、それまでにできるだけ早く遠くに離れないと。


 そしてふと後ろを見るととてつもない速さで石がリリちゃんに飛んできた、私は咄嗟にリリちゃんを庇い後ろの腰を怪我してしまった。


 「うっ」

 「お、お姉ちゃん!?」


 男達が歩いてこちらに近づいて来る。


 「兄貴、女は綺麗な状態でって言ってたじゃねーかよ」

 「う、うるせー、とにかく捕まえりゃあいいんだよ!」


 まずい、このままだと…どうすれば。

 するとリリちゃんが私の手を掴み引っ張り出した。


 「リ、リリちゃん、私、そんなに早く走れないから」

 「大丈夫、安全な所に連れて行ってあげる」


 何言ってるの?あ、も、もう無理

 私はその場に倒れた。


 男達がまた近くにやって来る、今度こそもう終わりだと、そう覚悟した。


 その時だった、目の前に強い風圧と、何かが地面に強く打ち付けられる音がした、何が起こったのか答えはすぐに分かった。


 銀色に見間違えるほどの綺麗な白髪をなびかせ、体を覆うほどの大きなマントから出た右手には、等身より大きな両刃の鎌を持つ、そうだ、彼が来てくれた。


 「セシリーごめん、今度こそヘマしない、もう一度チャンスをくれ」


 真面目な彼は私に謝罪した、でも失敗したとか、そんなことはどうでも良かった、ただ諦めずに一晩耐えた甲斐があった、信じて良かった、だから私はこう言った。


 「ううん、頼りにしてるから、来てくれてありがとう、ネオ君」

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