第20話
もうあんなヘマはしない、心にそう決めた俺は今もう一度あの男達の前に立った。
「ヘッ、また来やがったのか」
太った兄の方が俺に向かって言う。
「兄貴、俺がやるぜ」
「おう、また騙し討ちでも何でもいいからやっちまえ」
弟がローブから剣を抜いて出し、俺に向けてきた。
なるほど、こいつの本当の戦闘スタイルはこれか、確かにこんなに体が出来上がってるのにも関わらず、吹き矢一本で戦ってる方が馬鹿だ。
弟が真正面から攻めてきた、それを俺も真正面から迎える様に構える。
目の前に来るかと思わせて弟は体制を変え、俺の足を引っ掛けるように滑り込んで来た、しかし俺はそれを見切って足の裏と鎌の柄で地面に叩きつけた。
「ぐあああああ!」
「ブライア!」
この男ブライアっていうのか、まぁもうどうでも良いけど。
ブライアは俺に跨られている形で白目を剥き、仰向けで地面に横になっている。
「次はお前だぞ、それとももう諦めるか?」
敵は狼狽えながら短剣を出し準備する、しかし敵は突然笑い出し、短剣を投げ捨てた。
「ブライアを巻き込むのが嫌だったけど、こんな役立たず、もうどうにでもなりやがれえぇぇ!」
いきなりヒステリックになり、地面に手をあて、そこから土地が盛り上がって俺に向かって伸びてきた、すぐにジャンプして避けたが、その土はセシリーに軌道を変えた。
「セシリー!」
俺は彼女の元へ急ぎ、体を抱え急いで避け、リリの元へセシリーをおいて行く。
盛り上がった土の先は弾け飛ぶようにエネルギーが溢れ、ブライアが巻き込まれ跡形も無く消えた、これが土魔法か、思ったよりやばそうだな。
敵が両手を交互に出して石を掌から放出する、石はまた無計画に飛んできた、俺はそれらを全て避けながら前へぐんぐん進み、声を張り上げながら敵に向かって鎌を振り下ろす。
「うああああ」ガン!
しかし男は、硬い大きな岩を両腕に作り出し俺の鎌を受け止めた、俺は隙を見せずこの後も鎌を敵に振り回し続ける。
鎌の刃と岩のぶつかり合い擦れ合う音が辺りに響く。
バキィン!ガシィン!
後ろにジャンプして一度距離をおく。
「ガキが…舐めてんじゃねえぞおお!」
男が大きな岩を作り出す、それはそれは大きな、人間のサイズより遥かに巨大な岩だ、それが俺の元へ早速飛んできた、しかし大きさだけで密度が足りなかったのか、意図も容易く砕くことができた。
そのまま砕けた岩の隙間からエアスライスを放ち、男はそれに対応して岩壁を作り出し防いだ。
岩壁が消え男が顔を出す、その表情はなぜか不敵な笑みを浮かべている。
周りを見渡すと、先ほど砕いた岩の破片が宙に浮かんだままの状態で止まっており、次の瞬間俺に向かって一斉に飛んできた。
土魔法っていうのはこんな事もできるのか、案外便利だな。
男が腕を振り回す動作をしている、おそらく周りの破片を操っているのだろう。
「おらおらオラ!ざまぁみやがれ!」
俺は鎌で破片を弾いていくが、流石に数が多すぎたのか何発かくらった、右足に一発、脇腹に一発、幸い大した怪我ではな買ったから、大丈夫ではある。
多数の破片の襲撃がやんだら次はこちらが仕掛ける、俺は大きく構え、遠く離れた敵に向かってサイクロンを放つ、サイクロンは竜巻のように周り敵に向かっていく、男は風に包まれてしばらく姿が見えなくなり、竜巻がおさまると傷だらけの男が腕を抱えて経っていた。
「はぁ、はぁ、てめぇ…」
まだ立ってられるのかよ、やっぱり頑丈だな。
俺はまっすぐ走り出し、周りの木を一本一本めがけてエアスライスを放つ、そして敵の方へ木が倒れて混乱を誘う、そのまま走り続け敵に斬りかかった、男は慌てた様子で硬い岩の棍棒を作り俺の攻撃を受け止める。
お互い倒れる木を避け、途中から飛んで倒れかけの木に乗り、飛び移って攻撃を繰り返した。
木が全て倒れた後も戦いは続き、自分の武器同士を力強く振りまわし、ぶつけ合い、避け合う。
ヴン!ガン!バキィン!
その次、俺は木の幹に飛び、力強くひと蹴りして男に向かって速いスピードで斬りかかる、それを避けられた後再び向かいの木に飛び付きひと蹴りして斬りかかる、それを何度も繰り返した後途中で地面にスライディングで着地する。
「こんのガキー!」
男が走ってこちらに棍棒を振り下ろす、それを俺は転がって避け立ち上がり構え直す。
そして勝負は唐突に決まった。
葉が一枚落ちきるまでくらいの間、タイミングを見計らいながら見つめ合う……。
お互い一斉に走り出し攻撃し、男が俺の脇腹をめがけ棍棒を振る。
俺は強い突風を下向きに放出し一瞬の浮遊でタイミングをずらした、男の頭上で踵落としをして、軽く脳震盪を引き起こす、その勢いで踏み台にし、さらに高く飛んで真上からエアスライスを放つ。
胴体などは斬らず足に深く傷を刻み込み動けないようにした、男はうつ伏せに倒れ、立ち上がれない様子だ。
俺は地面に足をついて男の前に立ち見下す。
「もう動けなそうだな、安心しろ、命までは取らない」
「ガキが」
男が悔しそうに言う、振り返り立ち去ろうとしたその時、マントが破れて首の紋章が露わになる。
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