第4話
目が覚めると俺はベッドの上で横になっていた。
「気が付いたかい?」
そばで声をかけてきたのはアリシアだった。
俺が寝ているベッドから見て横の壁にもたれながら腕を組んでこっちを見ていた。
「アリシア…?ラウルは!?」
「大丈夫だよ、グラサーがちゃんと治療を施した、少し風に当たりたいってさっき出て行ったばかりだ」
「そっか」
よかった、皆生きて帰って来れた。
「でもよく俺たちの居場所がわかったな」
「あんたの魔法の跡とか、引きずった足跡を追って来たら見つけられたんだ、でもびっくりしたよ、ボスがあんなに見るも無惨な姿で倒れていたなんて」
俺もびっくりした、あんな強敵を簡単に倒してしまうとは、あれがホリビスの…避けられるのも分からなくはない。
「まあ、何はともあれ助かってよかったよ、大したもんだ」
俺が気にしたことを察したのか、アリシアがそう言ってくれた。
アリシアは俺の方に近付き、再び喋りはじめた。
「ラウルは川沿いにいるって言ってたよ、動けるなら行ってみると良い」
「…うん」
「実はね、ネオと離れることを一番悲しがってたの、あいつなんだよ」
え?そうだったのか…。
アリシアの言う通り外に出て川沿いに行くと、ラウルの背中があった。声をかけようとしたが振り向いて気付いたのでその必要はなかった。
隣に座り、少しの間沈黙が続いたが、ラウルは呼吸を整え口を開く。
「本当にありがとうな、お前がいなかったら生きて帰れなかった」
「いや、俺がパーティの空気悪くしたからあんな事になったんだ、ごめんなさい。」
「それは俺が上手く説明できなかったからだ、こっちこそすまん」
お互い心からの謝罪をした。
「それにしても、知らないうちにできることも増えたようで感心したぞ、ボス相手にもあんな動きができる様になってたなんて驚きだ」
「でも最終的に倒したのは俺じゃない」
「そんなことはどうでもい、少し前なら出来なかったことが出来いたんだ、凄いじゃないか!俺からしたらしっかり一人前だ」
あぁ、そう言えばこんな人だった、少しの成長でも見逃さず褒めてくれる。そんなラウルの人格を疑うなんて、俺は…。
そう思っていたらラウルが真剣な顔でこちらを見てきた。
「ネオ、俺たちは冒険者パーティをやってはいるが、本当は違うんだ、本来の目的が他にある」
目的?一体なんなんだ。
「その目的は詳しくは言えない、だがそのために今までずっと準備をしてきたんだ、それにお前を巻き込む真似はできない、危険な事になるしな」
遅かれ早かれこうなるのは変わらなかったと言うことか。
「そんな大切な目的があるのに、俺は邪魔じゃなかったのか?」
ラウルは顎に手を当てながら答えた。
「まあ正直大変ではあった、でもその分お前が癒しになってくれてた、だから邪魔なんてことは絶対なかったぞ、だから色々教えたんだ」
そっか、皆は俺が一人でも生きていけるように、そのために生きる術を教えてくれていたんだ。いつでも手離せた俺を…ずっと大切にされてたんだ。
蟠りが解け、俺たちはその後今まで通りの毎日を送った。
~一月後~
「これで荷物は全部か」
朝、まだ日が上らない時間にフィンガルが、大きな荷物を馬車にしまいながら言った。
「お前ももう準備は終わったか?」
「ああ。」
「そうか、じゃあな、ネオ」
「うん、じゃあ」
ラウルの挨拶に答えた。本当にこれでお別れか、まあ心の準備はもうできてたしな、大丈夫だ。
するとラウルが俺の肩を叩き言う。
「あと二年経った頃にはお前も大人の仲間入りか、まあその時にはまた会って一緒に祝杯でも上げようぜ」
「会えるの!?」
「会えたらな」
そうか、会えるんだ、すぐじゃなくても、またいつか会えば良いんだ。俺はもうてっきり二度と会えないとばかり思っていたが、そうじゃなかった。
「じゃあね、本当に楽しかったよ、あんたはこれからもっと強くなる、だからいつか、その成長した姿を見しておくれ」
アリシアの言葉だ。
「本当に別れたくない…でも仕方ないよな、魔法の練習も頑張れな!」
フィンガルの言葉だ。
「お元気で、ネオ、体には気をつけるんですよ」
グラサーの言葉だ。
「うん、皆も元気でな、俺、頑張るよ」
みんな別れの言葉を言うと次々に馬車に乗って行った、そして最後にラウルが俺に近付き話し始める。
「いいか、これだけは言っておく」
「え?」
何だ?説教?
「多分これから俺達の知らない所で、お前は色々な壁にぶつかる、自分の道を見つけると生きていく上で避けられない事だ、全てに納得いく結末を迎えられない事もあるだろう、でもそんな時は、俺達のことでも思い出して元気出せ、この世界の空や風は繋がっている、必ず俺達はどこかにはいる、俺が言いたいのはそう言う事だ」
「ちょっと臭いけど、覚えておくよ」
俺は冗談で少し嫌味っぽく返し、ラウルは笑った。
「ハハ!じゃ、またな!」
ラウルも馬車に乗り、馬が走り出す、俺は馬車が見えなくなるまで見送った。
皆には沢山の事を教わった、本当に感謝している、だから俺は決めた。
これから何をするかはそのうち決めよう、だがいつかまた会う頃には、立派な大人に成長して皆に会おう、それが俺の恩返し、いや、親孝行だ。
目線の先には眩しい朝日、耳に聞こえるのは鳥の囀り、まるで俺の新しい門出を応援してくれている様に感じた、俺はそれに応えるように、朝日を背にして一歩を踏み出した。
俺の物語はこれからなのだ。
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