第22話
語り手:リリ
私は私が分からない、記憶が曖昧でどこから来たのかすらも覚えてなくて、いつの間にか森にいた、でもリリっていう名前は覚えてたり、言葉とか、魔法のこともなんとなく知ってた。
でも毎日が寂しくて、だから友達を作りたくて、魔物のみんなと仲良くなった、フェンリル、ブラックウルフ、ほかにもいろんな子達と仲良くなったけど…けどやっぱり寂しかった。
ちゃんと言葉が話せるお友達が欲しい、私の体を見ても怖がらない、嫌なかおしない、本当に大切にしてくれるお友達が。
そう思って私は森を出た、お友達を探しに、同じとしくらいの子と仲良くなりに。
最初に見つけたのはまさにその同じとしくらいの女の子達だった、私は早速話しかけに行った。
「ねぇねぇ、何してるのー?」
「え?追いかけっこだよ!」
女の子達が足を止めて、私の方を振り向いて教えてくれた。
私も入れてとお願いしたら快く受け入れてくれて、その後楽しく遊んだ、最初は仲良くできてると思ってた。
「待ってよー!」
「やだやだ〜、あっ」
ドタッ!
私がお友達から逃げていた時、ついこけてしまい、その拍子に服がめくれ上がった、そんな私の黒いアザを見たその時のみんなの反応は、二度と忘れられないかもしれない。
まるで虫でも踏んでしまったかのような、とてつもなく醜い物を見てるけど、目が離せない、そんな表情で私を見る。
「ど、どうしたの?…」
私は服をなおして、みんなに何もなかったように振る舞った、でももう遅かった。
「きゃー!触らないで!」
立ち上がりみんなに話しかけながら手を触ろうとすると、手を振り解かれて逃げられてしまった。
「黒いのがうつるー!」
その場に取り残された私は、一人寂しく森に帰った。
私の体の黒いのってやっぱり怖いんだ、見せちゃうとみんな怖がっちゃう、どうしよう…。
そうだ、魔法がある!魔法で私のこと好きになってもらえば、黒いの見られても嫌われないし、あんな目されないよね、頭いい!
こうして私は準備した、森の至る所に罠を仕掛けて、その下には魔法陣を描いた。
よーし、ここに私がお友達を上手く誘き出そう、これが上手くいけば、寂しい毎日が終わって楽しい毎日になる!ったのしみー!!
次の日私は森を出た、今度は反対の方向に。
「どこかにいないかなー、ちょうどいい子」
とりあえず歩き回って子供を探し続けた、すると一人の男の子に出会った。
「わー!いじめないでー」
見た目は赤いけど、でも怖がり方とか見たら多分子供だよね、ツノが生えてる、めずらしー!
「私ね、リリって言うの、お名前は?」
私はしゃがんで尻餅をついた男の子に名前を聞いた。
「ボ、ボッツ」
「ボッツくん、なんでこんなところにいるの?」
ボッツくんは小さな声でオドオドしながら答えた。
「ま、迷子で、どこにいけば良いか分かんなくて…」
「なんだ一緒じゃん!私も迷子なんだ」
こうして私はボッツくんとしばらく一緒に歩いた、普通の森の中、草原の中、適当に誰かを探して。
実際はこのまま少しずつ、この子を森の中に引っ張ろうと思ってるんだけどね。
聞くとボッツくんは私より年下の男の子だった、ってことはお姉さんだぁ、なんか楽しそ〜。
すると近くに、お兄さんが気持ち良さそうに寝ているのを見つけた、髪が白くて、体を大きく覆うマントを着ていて、大きな鎌を横に置いている。
「あ、あの人に道、聞く?」
ボッツくんが言い出した。
えー、困ったなぁ、このまま森に行きたかったのに…。
「大丈夫だよ、なんかあんまり近付いちゃいけない感じするし、やめよ?」
でもボッツくんの顔はやる気だった、ボッツくんは茂みから出ていき、お兄さんのいる近くへと走った、私は思わず走って追いかけた。
「待ってよ」
小さな声でボッツくんに話しかけて止めようとした、すると目の前のお兄さんはすでにこっちを見て私達のことに気付いてしまった。
お兄さんは立ち上がって、私達に近付こうと手を伸ばしてきた時、もう一人、今度はおじさんが武器を持ってこっちを拒絶した。
「危ねぇぞ!」
何で?黒い所は全部隠してるのに、何で私のことそんな目で見るの?
足が震えてきた、またあの子達みたいな顔を見ることになるかもしれない、そんな恐怖を感じた。
「待って!」
そして間も無くもう一人、お姉さんが間に入って私達を庇った。
「嬢ちゃん、こいつはオーガだぞ、魔族なんだぞ!」
「でもこの子はまだ何もしてないじゃないですか、魔族だからって刃物まで出さなくていいでしょ!」
その瞬間ほっとした、この人達が恐れていたのはボッツくんの方だった。
よかったー。
「う、うぅ、おかぁ、おとーん!」
いきなりボッツくんが泣き出した。
もー、しょうがないなー、自分で話しかけに行ったくせに、よーしよーし。
私は何も言わないで、優しくボッツくんの頭を撫でてあげた。
この後、ボッツくんはお父さんと再会できて帰っちゃった、残念だなぁ、お友達になって欲しかったのに。
***
でもその代わりにお兄ちゃんとお姉ちゃんが森に入ってくれた、ちょっと歳離れてるけど関係ないよね。
でもでもどーしよ〜、お兄ちゃんが魔物に襲われてもすぐやっつけちゃうからなぁ…よし、無理矢理にでも。
「ねぇねぇ、あっちに木の実いっぱい落ちてるよ、行ってみようよ!」
もうこれで罠まで連れて行っちゃお。
「危ない!」
お兄ちゃんが、私とお姉ちゃんの体を急に掴んでその場から離れた、前を見るとそこにはフェンリルがいた、え、どうしたの?頼んでないけど。
フェンリルはお兄ちゃんと戦おうとしている、そっか、私のお手伝いしようとしてくれてるんだね!お願いだから死なせないでよ。
するとお兄ちゃんは変な構えをして、イタチさんを呼び出した。
あれ?この動物さんって、もしかしてホリビス?ってことはお兄ちゃん、嫌われてる人?
じゃあ仲間じゃん!私とおんなじってことじゃん!
気付くとフェンリルは、お兄ちゃんに倒されていた。
なーんだ、”役立たずだなぁ”。
「お兄ちゃんかっこよかった!何あのイタチさん!凄い!」
「あ、そうか、ありがとう」
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