第14話

 巨人の森に入って五日が経った。

 これだけ歩き続けていると慣れてきたな、大きな樹木に道を迷わされそうにもなるが、初日よりも確実にテンポ良く進んでいけている気がする、とりあえず今は休憩中で、焚き火を三人で囲んで談笑中である。


 「魔法は、この世界に九つの属性があります、火、水、氷、土、風、雷、闇、光、葉樹」


 リリがセシリーの膝の上で本を読んで貰いながらお勉強だ、俺視線だと大きな本で顔が見えないが、足をぶらぶらさせ手を動かしている様子が楽しそうな顔を容易に想像できる。


 「お兄ちゃんが使ってたのが風で、お姉ちゃんが使ってたのが火だよね」

 「正解!リリちゃん賢いね〜」


 頭を撫でられ誉めて貰い嬉しそうなリリ、セシリーが本を片手に持った瞬間にこっちにも顔が見えた、とてもいい笑顔だ。


 「で、魔法には階級があります、初級、中級、上級、天上級」

 「天上級って大きな大きな魔法だよね!見たことないけど聞いたことある!」


 本当に楽しそうに勉強するなぁリリは、セシリーも教えるの楽しいだろうな、そう思いながら俺は鎌の刃を磨き手入れする。


 「そうねぇ、普通は中級までしか見ることないもんね、あと九つの属性は一年間のそれぞれの月としても数えられているのは知ってる?」

 「知ってる!、四十日が九ヶ月分あって、全部で三百六十日だよね」

 「え、月の名前って属性と一緒だったのか?」


 俺が口を挟んだ瞬間、何故か二人が黙り出す、ん?なんか俺変なこと言ったか?


 「ネオ君…十五年間生きてて何で逆に気付かなかったの?」

 「お兄ちゃんって意外と勘悪いんだね!」


 年上に少し引かれ、年下にめちゃくちゃ馬鹿にされてしまった、リリがとてもいい笑顔で笑ってくる。


 「そんなにおかしいか?」


 自分がおかしいことをどうしても認めたくなかったのか、俺はセシリーに真面目な顔で聞く。


 「いやー、まぁ今のは言いすぎたけど、別に月の名前も属性も把握してるのにそこの共通点に気付けないのはねぇ…」

 「いや分かった、俺がおかしかったよ」


 セシリーに掌を向けて静止した、これ以上言われても恥ずかしいだけだと思い、早々に引き下がった。そうか、普通は気付くのか…。


 「フフッ、ネオ君も一緒に勉強しよ!大丈夫だよ!そんなのすぐ気にしちゃう所可愛い」


 セシリーが内股でリリを膝に乗せた状態で横斜めの姿勢で言う、可愛いって…まるで子供みたいに扱われるなんて。


 「可愛いお兄ちゃんもちゃんとお姉ちゃんのお話聞こうね!」


 リリがセシリーの膝の上で前のめりになりながら”にーっ”と歯を剥き出しにした笑顔で俺に言ってきた。なんでだろう、リリに言われるとそんなに気にならなくなるな。


 「そうだな、俺にもいつもみたいにいろいろ教えてくれよ」

 「うん、え〜っと〜、あ、これはどうかな」


 セシリーが自分の鞄からまた別の本を取り出した、本は古そうで、分厚いかどうかで言えばそこまで分厚いわけでもない普通の見た目だ。


 「ネオ君はさ、今この世界にいる魔物達のルーツって知ってる?」


 本を持ちセシリーが俺の目をじっと見つめ聞いてきた。


 「いや、知らない、ていうかそんなの考えたこと無かったな、魔物なんていつも普通にいるのが当たり前だと思ってたし」

 「そうだよねぇ、じゃあこれ聞くと飛びあがるよ〜」


 本で口元を隠しにひにひと笑うように、上目遣いでこっちを見て、今から喋るのを楽しみにしている様子のセシリー、早速喋るようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る