出かけて帰ってきてみれば
平 遊
運が悪ければ今頃―
これは、ご近所の山田さん(仮名)が体験した実際の話です。
その日山田さんは、近くのスーパーへお買い物に出かけました。ほんの一時間ほどのお買い物です。
山田さんは自営業を営んでいて、平日がお仕事のお休みの日です。お買い物に出かけたのは、お休みの日の平日の昼間。仕事がある日であれば仕事場にいる時間帯でした。
帰宅した山田さんは、家の鍵が開いている事に気づきました。
あれ? 鍵はかけたはずなんだけど……うっかりかけ忘れてしまったのかな。ちゃんと気を付けないと。
実は以前にも何度か鍵をかけ忘れて出かけてしまったことのある山田さんは、さして気にすることもなく自宅に入り、まっすぐにリビングへと向かって、買って来た荷物を下ろし、ホッと一息をつきました。
そして、少し座って休憩をしようと、ダイニングテーブルの方へ振り向いた時です。
ダイニングテーブルの上に、あるはずの無いモノが置いてある事に気づきました。
それは、一本の包丁。
普段使っている包丁ではありましたが、危ないので使用する時以外は片付けていますし、そもそもダイニングテーブルで包丁を使う事は無いため、山田さんが置きっぱなしにしたものではありません。
その時、山田さんは思い出しました。最近、近所で空き巣被害が多発しているという事を。
すぐに警察に通報して調べて貰いましたが、残念ながら犯人の特定には至らず。ただ、幸いなことに、盗まれたものは何も無かったということです。
この話をしてくれた山田さんは、最後にこんな事を言っていました。
「もし、帰る時間がズレていたら、犯人と鉢合わせしていたかもしれないんだよね。そうしたら今私は、生きてここにはいられなかったかもしれない……」
【終】
出かけて帰ってきてみれば 平 遊 @taira_yuu
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