第5章:葛藤と再出発
第56話「東京での成長」
東京での生活が始まって数ヶ月、大輝は徐々に自分の居場所を見つけ始めていた。小さなライブハウスでのパフォーマンスが評価され、少しずつではあるが知名度が上がり始めている。特に最近は、月城プロデューサーが大輝に期待を寄せるようになり、次のステップへと進むためのサポートを惜しまず提供してくれている。
ある日、大輝はライブハウス「アンダーグラウンド」のステージに立っていた。いつも以上に観客が詰めかけており、その視線が彼に注がれていることを感じた。ギターの音が響き渡る中、大輝は心地よい緊張感を感じつつ、全身で音楽に没頭していく。
曲が終わり、会場から湧き上がる拍手と歓声が彼の耳に届いた。大輝は心の中で安堵の息をつきながらも、次のステージに向けた新たな意欲が湧いてくるのを感じた。ライブ後、月城プロデューサーが大輝に近づき、彼の肩を叩いた。
「いいパフォーマンスだったな、大輝。君の成長がよく見えるよ。」
その言葉に、大輝は素直に嬉しさを感じた。これまでの努力が少しずつ報われていることを実感し、さらに上を目指そうという意欲が湧いてくる。
しかし、ふとした瞬間に大輝の心に影を落とすものがあった。それは、奏音の存在だ。最近、ネットや週刊誌で奏音が地元に戻ったという報道が出始めていた。だが、その詳細についてはどこにも触れられていない。奏音と直接連絡を取ることはできたが、彼女はあまり具体的な話をしようとはしなかった。
「奏音、どうしてるんだろう…」
そんな疑問が大輝の心を締め付ける。しかし、彼自身の活動も大事にしたいという気持ちがあり、すぐに動ける状況ではなかった。東京での生活が少しずつ軌道に乗ってきたとはいえ、奏音のことが頭から離れることはなかった。
月城プロデューサーの言葉が彼を引き戻す。
「さて、次のステップに進む準備ができたら、また新しい挑戦をしよう。君にはまだまだ可能性がある。」
大輝はその言葉に頷き、心を決めた。奏音のことが気にかかるが、今は自分の成長を続け、彼女に胸を張って会えるようになろうと決意した。
ライブハウスを後にし、東京の夜空を見上げると、大輝の心に新たな希望が芽生えた。同時に、奏音がどこかで同じ空を見上げているのだろうかと考えながら、彼は前を向いて歩き出した。
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