第54話「試練と決意の先へ」

映画撮影現場での見学が終わり、夕方の光が街に差し込む頃、大輝は月城プロデューサーと共に歩いていた。


奏音のプロフェッショナリズムに圧倒され、自分もさらに高みを目指したいという強い意志が芽生えていた。奏音がステージや映画の世界で輝いている姿を見て、大輝は自分も何かを成し遂げなければならないと感じていた。


「奏音、すごかったですね」

と大輝が口を開く。


「そうだな。彼女は努力を惜しまない。お前も、あの舞台に立ちたいなら、まだまだやることがあるぞ」

と月城プロデューサーが応じた。


大輝はその言葉に頷きながら、次に何をすべきかを考えていた。すると月城プロデューサーが立ち止まり、大輝に向き直った。


「大輝、君の成長は目覚ましいが、さらに高みを目指すなら、特別なトレーニングが必要だ。君には、その準備ができているように見える。」

「特別なトレーニングですか?」


大輝は少し驚きながらも、興味を持って質問した。


「そうだ。プロのミュージシャンとしての基礎力を徹底的に鍛えるプログラムだ。それに、ステージでのパフォーマンス技術も向上させる。これに挑戦する覚悟はあるか?」


大輝は一瞬、自分の実力に不安を感じたが、すぐにその不安を振り払った。奏音も同じような試練を乗り越えてきたに違いない。自分も挑戦しなければならない。


「やらせてください!」


大輝の声には、決意が込められていた。

翌日、大輝は月城プロデューサーに紹介されたスタジオに向かった。そこには、プロを目指す若者たちが集まり、すでにトレーニングが始まっていた。講師は有名なミュージシャンであり、彼の指導は厳しく、容赦がなかった。


「大輝、お前の演奏には情熱があるが、技術が追いついていない。プロとしてやっていくには、もっと磨かなければならない。」


講師からの厳しい指摘が飛んだ。大輝は自分の未熟さを痛感し、悔しさがこみ上げてきたが、その感情が彼の闘志に火をつけた。もっと練習し、もっと成長しなければならない。日が経つにつれて、大輝は他の参加者たちと切磋琢磨しながら成長していった。厳しいトレーニングの中で、自分の弱点や強みを再認識し、改善に努めた。ある日、月城プロデューサーがスタジオに訪れた。トレーニングの様子を視察し、大輝の成長ぶりに目を細めたが、その表情にはまだ何かを求めているような鋭さが残っていた。


「この調子でやっていけるか?」


月城プロデューサーが問いかけた。大輝は汗を拭いながら、強い決意を持って応えた。


「はい、絶対にやってみせます!」


その夜、大輝は東京の夜景を眺めながら、これからの自分を思い描いていた。奏音と同じ舞台に立つために、自分はどこまで進むことができるのか。彼の心には不安もあったが、それ以上に、次に待ち受ける挑戦に対する期待感が大きかった。


「やらない後悔より、やって後悔するほうがいい。」


その言葉を胸に、大輝は新たな決意を固めた。これからの自分に向けて、全力で挑戦する覚悟は揺るぎないものとなっていた。

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