朝早く地元を出発し、長い時間をかけて大輝は東京駅に到着した。初めて見る東京の街並みは、想像以上に活気に満ちており、人々の流れがどこか異次元に感じられる。地元の駅とはまるで違う、圧倒されるような人混みと都会の喧騒に、少しだけ足がすくむ思いがした。

「ここが、あの奏音が活躍している場所なんだな…」

そう思うと、心の中に少しだけ寂しさと興奮が交じり合う。大輝はスマートフォンを取り出し、月城プロデューサーに連絡を取る。待ち合わせ場所を確認し、指示された通りに進んでいくと、見覚えのある姿が目に入った。

「大輝君、無事に着いたようだね。」

月城プロデューサーは優しい笑顔で迎えてくれた。大輝は緊張しながらも、頷いて挨拶を返す。

「はい、お世話になります。」

月城は大輝の肩を軽く叩きながら、車に乗るよう促した。車の中で、これからの仕事について説明が始まる。

「今日は君に紹介したいアイドルグループがいるんだ。彼女たちはまだデビュー前だけど、かなりの才能を持っている。君には彼女たちのバックバンドとして演奏してもらうことになるんだ。」

大輝はその言葉を聞き、少しのプレッシャーと共に期待感が高まっていく。新しい環境で、どんな仲間たちと出会えるのだろうか。その思いを胸に、車窓から流れる東京の街並みに目を向ける。

やがて、月城の案内でスタジオに到着する。建物に入ると、音楽が練習スタジオから漏れてきており、その音に心が少し高鳴る。月城プロデューサーはスタジオの場所や今後のスケジュールを簡単に説明し、大輝を中へと案内した。

スタジオの扉を開けると、若くてエネルギッシュな雰囲気が漂うアイドルグループのメンバーたちが待っていた。大輝は緊張しながらも自己紹介をし、彼女たちに挨拶をした。

「初めまして、大輝です。これから一緒に頑張りましょう。」

アイドルグループのメンバーたちは、笑顔で大輝を迎え入れたが、彼女たちもまた少しの緊張を抱えていることが感じられた。大輝は、彼女たちと共に良い音楽を作り上げたいという思いを強くした。

さらに、他のバックバンドのメンバーとも顔を合わせる。彼らは経験豊富なプロのミュージシャンたちであり、大輝は彼らの存在に少し圧倒されながらも、同時に学ぶことが多いと感じた。

練習が始まり、大輝は最初はぎこちなさを感じつつも、少しずつリズムをつかんでいく。彼らのプロフェッショナリズムに触れ、自分の未熟さを痛感しながらも、全力で取り組むことで次第に緊張も和らいでいった。

練習が終わり、スタジオを出ると、月城プロデューサーが再び大輝に声をかけた。

「初日にしてはよくやってくれたね。でも、これからが本番だ。しっかり準備して、次のステップに進もう。」

大輝はその言葉に励まされ、深く頷いた。まだまだ課題は山積みだが、新たな挑戦に対する期待と緊張が入り混じる中、大輝は少しずつ自分の居場所を見つけようと決意した。

夜が更け、東京での新たな生活が本格的に始まるその日、大輝は東京の夜空を見上げながら、自分の音楽の道を進む覚悟を改めて心に刻んだ。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい