第46話「迷いの中の確信」

昼休みの屋上は、他の生徒たちが楽しそうに過ごす音で溢れていたが、大輝はその喧騒から少し離れた場所で一人ギターを弾いていた。選んだ自由曲を何度も練習するが、どこか違和感が拭えない。


「これで本当にいいのか?」


大輝の頭の中をその疑問が何度も巡る。オーディションに向けて着々と準備を進めているはずなのに、心の中には不安が広がり続けていた。


放課後、音楽室に集まったバンドメンバーたちとの練習が始まる。演奏は順調に進んでいるように見えたが、大輝の心はどこか浮ついていた。


「大輝、なんか悩んでることあるのか?」影虎が気づいたように問いかける。


「いや、別に…」大輝はそう答えたが、その言葉に自分自身も納得できていなかった。


練習が終わり、家に帰った大輝は、母親の顔を見た瞬間、相談しようかと一瞬考えた。しかし、何をどう伝えればいいのか分からず、そのまま自分の部屋に戻った。ギターを抱えてベッドに座り、迷いが続く。


「やらない後悔よりも、やって後悔したほうがいい…」


奏音の言葉が頭をよぎるが、今回はそれだけでは決断に至らなかった。


翌朝、学校に向かう途中、大輝はふと公園に立ち寄った。ベンチに座り、深呼吸をする。心の中で自由曲を変更するべきかどうかの葛藤が続いていた。


その時、奏音がデビュー前に地元で歌っていた曲のことがふと浮かんできた。あの曲こそが、ずっと自分を支えてくれたものだと気づいた瞬間、大輝は立ち上がり、ギターを取り出した。そして、その曲を弾き始めると、心がすっと落ち着き、自然と笑顔が浮かんできた。


「これだ…これしかない。」


大輝は確信した。自分を表現するためには、あの曲を選ぶしかない。


学校に着くと、大輝は決意に満ちた表情でバンドメンバーたちに告げた。「自由曲を変更することにした。奏音が歌っていた曲を選ぶんだ。」


メンバーたちは驚きつつも、大輝の決意を尊重してくれた。「お前がそれでいいなら、俺たちは全力でサポートするだけさ。」


大輝は心の中で「これが自分の進むべき道だ」と強く感じ、オーディションへの準備を再開した。迷いは完全に消え去り、自分が信じる道を歩むための新たな一歩を踏み出す覚悟が決まった。

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