第38話「未来へのハーモニー」
公園での演奏を終えた大輝は、今まで感じたことのない自信が湧いてきた。
観客たちの反応から、自分の音楽が確実に誰かに届いているという実感を得たのだ。
「もっと多くの人に、自分の音楽を聴いてもらいたい…」
そう思い立った大輝は、以前奏音から聞いたことのある、レコード会社主催のオーディション大会を思い出した。
プロのミュージシャンを目指す多くの若者たちが集まり、そこで自分の音楽を披露するという、いわば大きなチャンスだ。
すぐにスマホで情報を調べ、オーディションの募集要項を確認した大輝は、心が高鳴るのを感じた。
「これだ…ここで挑戦してみよう。」
大輝はその場でエントリーを決め、必要な書類やデモ音源の準備に取り掛かった。
その日の夕方、奏音にメッセージを送った。
「奏音、決めたよ。レコード会社のオーディション大会に応募することにしたんだ。」
奏音からの返信はすぐに返ってきた。
「そうなんだ…すごいね、大輝。応援してるよ。」
しかし、そのメッセージにはいつもの奏音らしい元気さが感じられず、どこか違和感があった。
大輝は気になったが、あえて深く追求することはせず、ただこう返事を送った。
「ありがとう、奏音。君の応援があれば頑張れるよ。」
それでも、奏音のことが心に引っかかっていた。
彼女が何か抱えているのではないかという予感が拭えない。
夜、ギターを手にしながら、大輝はこれから自分が進むべき道について深く考えた。
プロのミュージシャンになるという夢は、簡単には叶わないかもしれない。それでも、自分の音楽が誰かの心に届くという事実が、大輝を前に進ませる力となっていた。
「俺の音楽で、奏音を支えることができたら…」
大輝は強く心に決めた。これから待ち受ける試練にも立ち向かい、夢を実現するために進み続けることを。未来への挑戦が始まったばかりの大輝は、奏音に何かが起きていることを感じ取りつつも、まずは自分の夢に向かって一歩を踏み出したのだった。
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