第37話「道標となる音」

大輝は、楽器店を出た後も、あの店主の言葉が頭の中に響いていた。


「心を込めて弾けば、自分の音を見つける手助けをしてくれる…」


その言葉は、まるで自分が何か大切なものを見つけるための道標のように感じられた。

大輝は、ギターケースの中にしまってある自分のギターを取り出してみた。今までと何も変わらないはずのそのギターが、どこか違うように思えた。


「これからは、もっと自分の気持ちを音に乗せていこう…」


そう心に決めた大輝は、花園市の中心部に向かって歩き出した。そこには多くの人々が行き交い、音楽を奏でる場も豊富にあった。

大輝は、もっと多くの人に自分の音楽を聴いてもらい、その反応を直に感じたいと思った。


道中、大輝はふと立ち止まり、目の前に広がる公園を見つめた。そこには、木陰に座りながらギターを弾く若者や、道端でフルートを吹く少女がいた。


大輝は、その光景を見て自分も演奏したくなった。


「ここでやってみよう…」


大輝は公園の一角に腰を下ろし、ギターの弦を指で軽く弾いてみた。


風が草木を揺らし、鳥たちのさえずりが響く中で、大輝のギターの音が静かに広がっていった。


大輝は、先ほどの楽器店での出会いを思い出しながら、ギターを弾き始めた。自然と、心の奥底に眠っていた感情が音となって溢れ出し、音楽に変わっていった。

その音色は、これまでの大輝の演奏とは違い、より深く、そして温かみを帯びていた。やがて、通りがかった人々が足を止め、大輝の演奏に耳を傾け始めた。


彼らの表情には、穏やかさや感動が浮かんでいた。

それを見た大輝は、さらに心を込めて演奏を続けた。


演奏が終わった後、観客たちは拍手を送り、大輝に感謝の言葉をかけてくれた。大輝は、これまでにない充実感を感じた。自分の音楽が誰かの心に届いたという実感が、大輝にとって何よりも嬉しかったのだ。


その日の帰り道、大輝は自分の中で新たな音楽の可能性が広がったことを感じていた。これからも、自分の心のままに音楽を作り続けていこうと、強く思ったのだ。

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