第34話「新たな目標」

初夏の朝日が差し込む花園市の街並みは、清々しい風に包まれている。


大輝はギターを背負いながら、軽やかな足取りで駅へ向かって歩いていた。

昨日の路上ライブが自信につながり、彼の心には新たな決意が芽生えていた。


「今日は、もっと自分の音楽を探してみよう…」


大輝はそう自分に言い聞かせながら、次に向かう場所を考えていた。


ライブハウスも路上ライブも、彼にとっては大切な経験だったが、もっと広い世界を知りたかった。

大輝は、まだ見ぬ音楽を探すために、電車に乗って近隣の街へ足を延ばすことにした。


電車に揺られながら、大輝はこれまでのことを振り返っていた。


奏音との再会やライブハウスでの演奏、そして昨日の路上ライブ。それらがすべて自分の成長につながっていると感じていたが、同時にもっと自分の音楽を深める必要があると感じていた。


「俺の音楽が本当に人の心に響くものになるには、まだ何かが足りない…」


その答えを見つけるために、大輝は自分を取り巻く環境を変える必要があると感じていた。新たな街での経験が、きっと自分に新しいインスピレーションを与えてくれるはずだ。


電車を降りた大輝は、初めて訪れる街の雰囲気に興奮を感じた。


街の中心を歩きながら、さまざまな音楽の匂いを感じ取ろうとしていた。


道端で歌うストリートミュージシャンや、カフェで流れるジャズのメロディー。

すべてが大輝の心に刺激を与えた。


「この街にも、俺の音楽が響く場所があるかもしれない…」


そう考えながら、大輝はふと目に留まった小さな音楽ショップに足を踏み入れた。店内には、古いレコードやアコースティックギターが並べられており、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。


「いらっしゃいませ」


店主と思しき年配の男性が、静かに声をかけてきた。


大輝は少し緊張しながらも、店内を見渡した。


「音楽が好きなのかい?」


店主の言葉に、大輝は頷いた。


「はい、今自分の音楽を探しているんです」


その言葉に、店主は興味深そうに大輝を見つめた。


「それなら、このギターを使ってみるといい。たくさんの人の手を経てきたものだが、その分だけ多くの物語を知っている」


そう言って、店主は壁に掛かっていたギターを手渡してくれた。大輝はそのギターをそっと弾いてみると、暖かく、深い音色が広がった。


「この音…まるで、人の心を知っているみたいだ…」


その瞬間、大輝の中で何かが弾けた。自分の音楽に何が足りなかったのか、その答えが少しずつ見え始めてきたのだ。


「このギターを借りてもいいですか?」


大輝の問いに、店主はにっこりと微笑んだ。


「もちろんだ。君の音楽がどんなものになるのか、楽しみにしているよ」


ギターを背負った大輝は、再び街を歩き始めた。

新たなギターと共に、大輝の音楽の旅はさらに広がりを見せようとしていた。


大輝は新たな街での経験を通じて、自分の音楽に足りなかったものを見つける。そして、再び花園市に戻り、その発見を元にさらなる成長を遂げることを決意するのだった。

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