第29話「交差する想い」

花園市の空は夕暮れに染まり、街全体が柔らかなオレンジ色に包まれていた。


大輝はライブハウスでの初演奏を終え、少し疲れた様子で自宅に戻っていた。


ギターを手にし、今日の出来事を振り返りながら、彼は深い呼吸をついた。


ステージに立つことで、今まで感じたことのない達成感があった。しかし、その一方で自分の未熟さも痛感した。


プロとして活躍する奏音──Kanonの姿が、今でも彼の心に強く残っている。彼女との再会が、大輝にとって何か大きな変化をもたらしたことは間違いない。


その夜、大輝は自分の部屋でギターを抱えながら、奏音のことを考えていた。


彼女はどんな想いで東京へ行き、そして今、プロとしての道を歩んでいるのだろうか。


彼女の言葉の裏にある真意を、大輝は理解しようと努めた。


翌日、大輝は再びライブハウスへ向かうことを決意した。今度は、もっと自分らしい音楽を追求するために。そして、大輝は自分の新たな挑戦を始める覚悟を決めた。


ライブハウスに到着すると、昨日の仲間たちが待っていた。

彼らもまた、次のステージに向けて準備をしている様子だった。

大輝は彼らに近づき、声をかけた。


「今日も演奏するつもりだ。もっと自分の音楽を表現したい。」


仲間たちは大輝の決意を聞き、笑顔で応援の言葉をかけた。

彼らにとっても、大輝が自分の音楽を見つけていく過程を見ることは喜びだった。


その夜、大輝は再びステージに立ち、ギターを弾き始めた。

昨日とは違い、彼の演奏には確固たる信念が込められていた。それは、彼自身が歩み始めた音楽の道を信じ、進んでいく決意の表れだった。


観客たちの拍手が鳴り響く中、大輝は心の中で一つの約束をした。


いつか、奏音──Kanonと肩を並べて音楽を奏でる日を目指して、自分の音楽を磨いていくと。

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