第24話「音の壁に挑む」
ライブハウスでの夜が明けた。
昨晩の興奮冷めやらぬ中、大輝はひとり帰路につく。
道すがら、昨夜の演奏の数々が脳裏に焼き付いて離れない。
プロのミュージシャンたちが奏でる音楽は、まさに圧倒的だった。
楽器一つひとつの音が鮮明に重なり合い、完璧なハーモニーを生み出す。その響きに、大輝は自分の音楽がいかに幼稚だったかを痛感させられた。
「自分の音楽、まだまだだな…」
その言葉が、心の奥底から自然に湧き上がる。
これまで努力を重ねてきたつもりだった。しかし、昨夜のプロたちの演奏を前に、自分の音楽は浅薄に思えた。
彼らの演奏には、技術だけでなく、魂のようなものが宿っていた。それこそが、大輝がこれまで感じたことのない次元の音楽だった。
家に帰るなり、大輝はギターを手に取り、自室の椅子に腰掛けた。
昨夜のライブのシーンを何度も頭の中で再生しながら、彼は指を動かし始める。
だが、どれだけ弾いても、あの音には届かない。焦りが募り、手汗で滑る指がギターの弦を外す。
「なんでうまくいかないんだ…」
大輝は自分の無力さに苛立ち、拳を握り締めた。
しかし、その悔しさが彼を奮い立たせた。自分がやるべきことはただ一つ。もっと練習して、自分の音楽を磨き上げること。
プロたちが積み重ねてきた努力に少しでも近づくためには、ここで諦めるわけにはいかない。
翌日から、大輝は放課後の時間をすべて練習に捧げることを決意する。
学校の部室で、彼は一人黙々とギターを弾き続けた。
耳を澄ませ、微妙な音の変化を感じ取りながら、ひたすら弦をかき鳴らす。
指が痛くなり、音が途切れても、彼は立ち止まることなく続けた。
そして、音楽に対する思いが次第に形を取り始める。
大輝は自分が音楽を通じて何を伝えたいのか、どんなメロディーを奏でたいのかを考え始めた。
ただテクニックを追い求めるのではなく、自分自身の思いを音に乗せる。
それこそが、彼が目指すべき音楽だと感じたのだ。
夜が更けると、大輝は疲れ果てた体をベッドに横たえた。
しかし、その瞳には新たな決意が宿っていた。
彼は音楽の壁を乗り越え、新たなステージへと進むことを心に誓った。
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