第22話「音楽の光」

音楽室に響くギターの音が、少しずつ形を成していく。大輝は集中しながら、指の動きにすべての感情を込めていた。昨晩から続けていたメロディーが、今では一つの曲としてまとまりつつあった。


「これだ…」


その瞬間、大輝の心に一筋の光が差し込んだ。これまでの迷いや不安が嘘のように消え去り、自分の中に確かなものが生まれたことを感じた。


奏音に追いつくために必死だった自分とは違い、今の大輝は自分自身の音楽を楽しんでいた。


ギターの音色は、徐々に音楽室全体を包み込んでいった。その響きは、今までの彼の演奏とは違う、どこか柔らかく、そして力強いものだった。


それは、彼が見つけた自分自身の音楽だった。


大輝はギターを弾き続ける。やがて、その音に合わせて自然と歌詞が浮かんできた。彼の心の中にある言葉が、音楽に乗せて形を成していく。


「いつか、この曲を奏音に聴かせたいな…」


その思いが、彼の中で強くなっていった。奏音がどこかで自分の音楽を続けているように、大輝もまた、自分の音楽を奏で続ける。それが、彼女との約束であり、自分自身との約束でもあった。


放課後、学校の帰り道で、大輝はふと立ち止まった。夕焼けに染まる空を見上げながら、彼は昨晩のメロディーと歌詞を頭の中で繰り返していた。そのメロディーが、まるで自分自身の新しいスタートを象徴しているかのように感じた。


「俺は…もう迷わない」


大輝は静かに自分に言い聞かせた。奏音との約束を守りつつ、自分の音楽を追求するために進んでいくことを決意した。その決意が、彼の胸に強く刻まれた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


奏音と過ごした最後の日々を思い出す。中学を卒業する前、彼女がプロデビューのために東京へ行くことが決まった時のことだった。


「大輝くん、私は東京で頑張るから、いつかまた一緒に音楽ができる日を楽しみにしてるよ」


奏音はそう言いながら、笑顔を見せた。その笑顔には、これからの未来への期待と、大輝への信頼が込められていた。その時、大輝は自分も彼女に負けないくらいの音楽を作りたいと思った。


「奏音ちゃん、俺ももっと頑張るよ。だから、また一緒に音楽しような」


二人はその約束を交わし、別れた。それから時間が経った今、その約束が大輝の心の中で再び燃え上がり、自分の進むべき道を照らし出していた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


夕焼けの中、大輝は家へと帰る足を速めた。


新たな音楽のアイデアが頭の中に溢れてきて、早くギターを手に取りたかったからだ。これからも彼の音楽の旅は続く。奏音との約束を胸に、自分自身の音楽を見つけるために。


その道の先に、どんな未来が待っているのかは分からない。しかし、大輝はもう迷わない。彼の心には、確かな音楽が響いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る