第21話「未来への扉」
翌朝、大輝は少し重たいまぶたをこすりながら学校に向かった。
昨晩、音楽室での遅い時間までの練習が影響していたが、不思議と心は晴れやかだった。
自分の中に新たな決意が芽生えたことが、彼の気持ちを軽くしていた。
教室に着くと、すでに多くのクラスメートが集まっていた。
大輝が席に着こうとしたその時、友人の一人が彼に話しかけてきた。
「おはよう、大輝。昨日も遅くまで練習してたんだろ? 顔に書いてあるぞ」
「おはよう。まあ、ちょっとね…」
大輝は苦笑いしながら答えたが、その表情にはどこか自信が感じられた。昨晩の練習で、ようやく自分自身の音楽を見つけるための手がかりを掴んだように感じていたからだ。
友人はそんな大輝の変化に気づいたようで、不思議そうに眉をひそめた。
「なんか、お前ちょっと雰囲気変わったな。何かあったのか?」
「うーん、そうかもな。まあ、少し考えることがあってさ」
大輝はそう言いながら、カバンから教科書を取り出した。だが、その目はどこか遠くを見つめていた。彼の頭の中には、昨晩見つけた新しいメロディーがまだ鮮明に残っていた。
その時、教室のドアが開き、担任の先生が入ってきた。授業が始まり、クラス全体が静まり返る。だが、大輝の心はまだ昨晩の音楽室に残っているかのようだった。授業の内容が頭に入ってこないほどに、彼は自分の音楽について考えていた。
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再び彼の頭の中に浮かんできたのは、幼い頃の奏音との思い出だった。
小学校の頃、二人で初めて一緒に演奏した日のことを思い出した。
大輝がギターを奏で、奏音がピアノを弾く。その時の彼女の表情は、今でも鮮明に覚えている。
「楽しいね、大輝くん! 私たち、いつかもっとたくさんの人にこの音楽を聴かせたいね!」
奏音はいつも未来を見据えていた。
彼女のその前向きなエネルギーが、大輝にとっても大きな刺激となっていた。
だが、今になって彼は気づく。
自分もまた、彼女と同じように未来を見据えて音楽を楽しんでいたのだと。
「俺たち、約束したんだよな…」
未来の自分たちを信じて、大輝と奏音は共に音楽を続けることを誓った。その約束が、今の彼を支える原動力となっていた。
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授業が終わると、大輝はすぐに音楽室に向かった。
昨日のメロディーをもっと練り上げたいという気持ちが、彼を突き動かしていた。
音楽室のドアを開けると、冷んやりとした空気が彼を迎えた。
大輝はギターを手に取り、昨晩の続きを奏で始めた。彼の指は自然に動き、次第に新しいフレーズが生まれてきた。その音色は、昨日とは違う、より確かなものとなっていた。
「これが…俺の音楽だ」
大輝はそう呟きながら、メロディーを紡ぎ続けた。
奏音との約束を胸に、自分自身の音楽を追求するための旅が今始まったのだと感じていた。そして、この音楽がいつか、奏音と再び共に奏でる日が来ることを信じていた。
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