第18話「追憶の旋律」

夕焼けが徐々に夜の帳に変わりつつある中、大輝は音楽室の時計を見て、もうこんな時間かと驚いた。

いつの間にか、放課後の音楽室には一人きりになっていた。


だが、その静寂さが彼にとっては心地よく、ギターを持つ手にさらなる力が込められた。


奏音との思い出や、二人の約束が頭の中で交錯する中、大輝はふと、最近の自分の状況について考え始めた。


高校生になってからというもの、音楽に対する情熱は変わらないが、奏音との距離を感じることが増えていた。


彼女はすでにプロの道を歩み始め、自分はまだその背中を追いかける立場に過ぎない。


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高校に入学してから間もない頃、大輝は周囲の期待やプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。


奏音がプロデビューを果たしたことが周知の事実となり、彼女と同じ中学出身であり、かつ親しい友人であった大輝にも、自然とその才能に期待が寄せられるようになった。


「お前、Kanonと同じ学校だったんだろ? じゃあ、お前もすごいんじゃないか?」


友人たちからの無邪気な言葉や視線に、大輝は困惑していた。


確かに、奏音とは仲が良かったし、音楽を一緒に楽しんできたが、彼女のような特別な才能を持っているわけではない。そんな思いが、次第に彼の心に重くのしかかるようになった。

一方で、奏音はその頃すでに音楽業界で評価を受け始めており、忙しい日々を送っていた。


連絡も次第に減り、大輝は彼女の存在を遠く感じるようになっていた。


そんなある日、彼は意を決して奏音にメッセージを送った。


「最近どう? 忙しそうだけど、元気にしてる?」


数日が経っても返信がなかった。彼女が忙しいことは理解していたが、返事が来ないことで大輝は少し寂しさを感じた。

そして、彼の中で次第に自分が彼女の存在にふさわしくないのではないかという思いが芽生え始めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


現在の音楽室に戻り、大輝はその時のことを思い出していた。


奏音との距離が遠く感じられるようになったあの頃、自分が彼女と並び立つことはできないのではないかという不安が、彼の心に暗い影を落とした。


「でも、そんなことで諦めたくない」


大輝はギターを強く握りしめ、心の中で強く自分を奮い立たせた。


奏音との約束を果たすため、自分自身も成長し、彼女と再び共に音楽を作り出すためには、今以上に努力しなければならない。


「奏音ちゃん、俺は君に追いつくよ。絶対に」


その決意を胸に、大輝は再びギターの弦を弾き始めた。


音楽室に響くメロディーは、彼の決意を反映するかのように力強く、そしてどこか切ない響きを帯びていた。夜の静寂に包まれた音楽室で、大輝は未来に向かって音楽を紡ぎ続けた。

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