第17話「消えた音楽」
夕陽が音楽室の窓から差し込む中、大輝はふと手を止め、ギターの音が静かに消え去った。
心の中で奏音との思い出を巡らせると、彼は無意識のうちに微笑んでいた。
だが、その微笑みの奥には、彼女との間に横たわる距離を痛感する切なさも隠れていた。
奏音がプロデビューを果たし、名を馳せるミュージシャン「Kanon」として成功している現実。
彼女がかつてのように自由に音楽を楽しんでいる姿を思い浮かべるたび、大輝の胸には複雑な感情が渦巻く。
彼は、あの日の約束を思い出した。
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中学時代、大輝と奏音はいつも放課後に一緒に音楽室へ通っていた。
学校の授業が終わると、二人は自然と音楽室に足を運び、奏音がピアノを、大輝がギターを弾く時間を過ごしていた。
音楽室は二人だけの特別な場所だった。
ある日、奏音は突然真剣な表情で大輝を見つめた。
「大輝くん、私…プロのミュージシャンになりたいんだ」
その言葉に大輝は驚いたが、同時に納得もしていた。
奏音の音楽に対する情熱は誰よりも強く、彼女の演奏はいつも人々を魅了していたからだ。
「うん、奏音ちゃんならきっとなれるよ。俺も応援する」
そう答えた大輝に、奏音は嬉しそうに微笑んだ。
そして、彼女は小さく頷くと、さらに続けた。
「でも、そのためにはもっと努力しなきゃいけない。だから、大輝くんにもお願いがあるの。私と一緒に音楽を続けてほしいんだ」
「もちろん、俺もずっと奏音ちゃんと一緒に音楽をやりたい」
その時、大輝は自然とそう答えていた。
二人の間に流れる音楽が、彼らの絆を強めると信じて疑わなかった。
そして、奏音はその言葉を聞いてさらに嬉しそうに笑った。
「約束だよ、大輝くん。私たち、ずっと一緒に音楽を続けようね」
その言葉は、二人の未来への誓いだった。
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現在の大輝は、その時の約束を思い出し、胸の中に再び熱い思いが込み上げてくるのを感じた。
奏音がプロとしての道を歩んでいる間、自分もその道を追いかけ、共に歩んでいくと誓ったことを忘れたことはなかった。
だが、その約束を果たすためには、自分ももっと成長しなければならない。奏音のように、自分の音楽で人々の心を動かすことができるようになるために。
「俺も、奏音ちゃんに負けないように頑張らなきゃな」
大輝はそう心に誓い、ギターを再び手に取った。
彼の指が弦に触れるたび、音楽への情熱が彼の胸に広がっていく。
奏音との約束を胸に、彼はこれからも音楽に全力を注ぐ決意を新たにした。
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